大田原 天宮のパン 栃木県の東部の八溝地域と呼ばれる茂木、烏山、旧馬頭町、旧黒羽町あたりは隣接している日光、那須の大観光地が日に日に変貌しているのとは対照的に丘陵、棚田、清流など栃木県らしい景観を色濃く残していて、目的地も決めずにふらっと巡ってみるとしみじみと心休まります。 そんな大好きな八溝地域で茂木や烏山、馬頭など八溝山南麓はいつも親しんで歩いていますが肝心の八溝山西麓はどこに行こうかというと取り立ててどこに行くというところもあまりなくて、気にはなっていてもどうしても足が向く機会もないままいまだに縁遠い地域でした。 先日、やっと那須町の旧芦野町や大田原市の旧伊王野村などにあたるこの八溝山西麓の丘陵地をぶらり巡ってきました。 目的はちゃんとあるのさ。それは「天宮のパン」です。てんぐうのパン。 知る人ぞ知る、というのはこんな時に使う言葉です。いやはや、その立地のユニークすぎること。ナビの助けを借りようにも住所さえ認識してくれなくて、それはナビに問題があるのか田舎過ぎることが問題なのかといえば当然後者です。近くに行けば看板があると聞いてはいたもののそもそも近くに行くのがたいへん。 おおまかな地点を入力して走ったらおいおいそっちは山でしょ、山に入っちゃうでしょ、とナビに問い詰めること数回、やっと(偶然に)看板を見つけることができました。 看板に従って対向車が来ないことを祈りつつ農道を進むと心和む景色の中にぽつんとその「天宮のパン」はありました。まるでミニシアター映画のシーンじゃないか。 簡素な建物のそのパン屋さんには物静かな店主が一人、もうオーブンの火も落として作業も一段落のようでした。開店から1時間ほどでしたがすでにショーケースのパンは半分以上は売れてしまっているようでした。食パンをスライスしてもらっている間にも次々来客があってこの調子ではお昼には空っぽになってしまいそうです。 車のナンバーを見ると地元(たぶん大田原あたりから)の客もあり、また私たちのような遠来の客もありという感じでした。
家まで待ちきれずに近くの道の駅に寄っていくつか食べてしまいましたがどれも思った通りのおいしさでした。ずっしりとして食べ応えのある自家製酵母のパンは食べていて心楽しくなりますね。 想像をひっくり返すようなロケーションにこぢんまりとした小さな店、店主が一人で自家製酵母のパン作りから客対応までこなしているパン屋さん(今風の呼び方じゃなく、パン屋さん)から両手にパンを抱えて店を出るときのしあわせ感といったら。
|