大博多山 だいはだやま 1314.8m
花に包まれて登る南会津の秘峰
南会津の山はどこに登っても山奥深く分け入ったなという気分に包まれます。
この大博多山はあまり知られてはいませんが南会津の奥の奥、伊南川と只見川とで区切られる山域にあって数少ない登山道のある山の一つです。
ブナの新緑の時期を狙って遠路出掛けましたが思い描いていた通りの素晴らしい山行となりました。
大博多山頂上(一等三角点)
新緑と残雪の大博多山前衛峰 背後は駒止湿原
【日程】 2018年5月12日 【山域】 南会津 【天候】 晴
【アクセス】 東北道西那須野塩原ICから国道400号へ。国道はその先国道番号を変えながら上三依、会津田島を経由して旧南郷村山口で国道401号へ左折、伊南川沿いに3.5kmほど走り青柳橋で対岸へ。橋を渡って左折して0.5kmほど先の久川橋手前を右折して林道青柳線へ。
途中にチェンが張られて通行止めとなっていますがチェンをはずして入れます。通過したらチェンを戻すのを忘れずに。
通常どの谷も山菜の時期には施錠するそうですがこの谷だけは登山者がいるので一応通行止めではありますが暗黙で入山できるようにしていると地元の山菜採りの方が言っていました。(地元の配慮に感謝する意味でも登山者はくれぐれも山菜採取はやめて登山のみを楽しみたいものです。)【駐車地】
林道終点に駐車地。数台。【コース】
林道終点 - 取り付き - アカマツ大木 - 尾根鞍部 - 大博多山(往復)
実行程約5時間 一般向き(登山道もしっかりしていますが道標も少なく万一道迷いをすると関東の山とは比べものにならない山深さです。)
【メモ】
いきなりの急登もブナの緑に包まれて登る:
ブナの森を登る
林道を分け入って終点広場からスタートです。先行の車が3台、うち2台は山菜採りの地元の人たちで、結局この日登ったのは私たちの他には1パーティのみでした。
私たちが準備を整えているわずかな時間に山菜採りの人たちは駐車地付近でガサゴソやっているだけであいこ(ミヤマイラクサ)を一抱えも採ってしまいました。じつに豊かな森です。(どの谷筋も地元の入会権が設定されているためよそ者は採集禁止です。)
登山道は林道終点から沢筋に向かいますがすぐに右に急斜面を登って行きます。私たちは山菜採取の踏み跡に引き込まれて沢筋に進んでしまい10分ほどロスしてしまいました。
改めて取り付きまで戻ってからブナの森の中を一気に登りましたが、この登りがとんでもない急斜面でそれが尾根まで容赦なく続きます。たびたび立ち止まって息を整えなければなりませんが、そんな時ブナの緑に気持ちが和らぎます。巨木のブナもありまた幼生のブナもあり、さらにはカエデやミズナラなども混じって豊かな植生を見せてくれています。
ちょうどムラサキヤシオの開花が始まったところで緑の中にところどころ良いアクセントとなっています。
尾根に飛び出す:
急登に次ぐ急登
ずっと一直線の急登のままやっとの思いで尾根に登り着いてここで一休み。位置としては1062m峰西の鞍部に当たります。あたりはイワウチワが咲きまた周囲の薮にはタムシバが純白の花を開いています。
尾根をたどる道はこれまでと比べれば少し楽にはなりますがそれでも何カ所か急登が待っています。とりわけ大博多山前衛峰の登りと大博多山山頂手前の登りは鞍部までの登りとあまり変わらない急斜面で、標高差から言っても取り付きから鞍部までと鞍部から頂上まではほぼ同じ程度です。
しかし尾根をたどる道ではところどころ樹林の隙間から展望も得られ、また谷の源流部を見下ろすこともできて絶景を楽しみながら一息入れられるので気分的には前半の鞍部までの登りとは随分違います。
尾根道の傍らにはイワウチワがたくさん咲いているほか一部ではタムシバのトンネルをくぐるようになって雪国の春の山を楽しめます。尾根から谷の源流部を眺めていたら一頭のカモシカがのんびり歩いて行きました。
雪に埋もれた縦向沢右岸の沢筋
ブナの新緑が眩しい滑沢上部
絶景の一等三角点峰大博多山:
前衛峰を越えて最後にわずかな急登の先で待望の大博多山山頂へ飛び出します。さすが一等三角点峰、素晴らしい展望が待っていてくれました。
圧巻は遠く白く輝く飯豊連峰、振り返ればこれも雪を頂く三岩岳など会津駒ヶ岳周辺の山(残念ながら会津駒ヶ岳は三岩岳に隠れてしまいます。)、さらには近景の駒止湿原から舟鼻山へと延々と続く平頂、伊南川を挟んだ隣の怪峰唐倉山、意外な近さの博士山、志津倉山などどれも普段見ることのできない展望あるいは異方向からの見慣れぬ展望に思わず声を上げました。日光や那須の山々が普段見る位置関係と逆になっているのは奇異な感じがしますが当然と言えば当然です。
西側の樹木が邪魔になって会越国境の山々はよく見えませんがそれ以外の方角はかなり遠方まで見通せました。
展望の他にも素晴らしい景観があります。目と鼻の先の前衛峰のブナ林です。根開けが進んでだいぶ地面が剥き出しになっていますがまだ残っている雪とブナの新緑との取り合わせが見事な景観を見せています。
飯豊山
三岩岳
前衛峰のブナ林
下りにも難儀:
前衛峰から大博多山頂上
存分に山頂の風景を楽しんでからいよいよ下山です。尾根道を戻るのは気分もルンルンで、目を落とせばイワウチワ、前方にはタムシバのトンネル、見上げればブナの新緑、これらは苦労して山深く分け入ってきたご褒美です。
しかし尾根を離れて下りにかかるととんでもない急斜面で最後のひと頑張りを強いられます。幸いほとんど途切れることがないほどロープが固定されています。普段はこんなに無意味にロープを張りおってなどと文句言ってることなどすっかり忘れてロープのお世話になりっぱなし。
下山したときにはやれやれとじいさんみたいなひと言。じいさんだからいいんですが。(^_^;
ブナの緑と残雪と、大展望と花々と、なんとも楽しく心にしみる大博多山でした。
全コース雪を踏むこともありませんでしたが年によっては急斜面に雪が残っていることもあるかもしれません。充分な装備は必要です。また、雪が消えれば稜線では道をはずすと猛烈なブッシュのために道迷いするおそれも少ないですが残雪がブッシュを覆っている時期は道迷いの心配もありこの山域での道迷いは命取りにもなりかねません。ぜひとも慎重な山行を。
大博多山の花(クリックで拡大)
アズマシャクナゲ
エンレイソウ
イカリソウ
イワウチワ
キケマン
ムラサキヤシオ
ニリンソウ
タムシバ【便利帳】 トイレ:道の駅きらら289 【寄り道】 道の駅きらら289:温泉付きです