【アクセス】 |
安曇野ICから豊科駅近くの南安タクシーへ。無料駐車サービスを利用してタクシーで一の沢ヒエ平登山口まで。
下山は三股まで迎えのタクシーを予約。(三股では携帯電話が繋がりにくいため稜線から連絡した方が無難です。三股駐車場の上に東屋があってそこなら多少電波状態はいいようです。)
この南安タクシーは無料駐車サービスの他に仮眠宿泊(無料。寝袋持参。)やマイカー回送など登山向けの営業に力を入れているようです。 |
【駐車地】 |
マイカーの場合一の沢にも三股にも数十台ほどの駐車場がありますが、ハイシーズンは満車になるようです。 |
【コース】 |
一の沢ヒエ平 - 胸突き八丁 - 常念乗越(泊)
- 常念岳 - 樹林帯 - 蝶槍 - 横尾分岐
- 蝶三角点 - 蝶ヶ岳ヒュッテ(泊)
- 蝶ヶ岳最高点 - 大滝山分岐 - まめうち平
- 力水 - 三股駐車場
やや健脚向き(危険箇所はあまりありません) |
【メモ】 |
常念乗越コバイケイソウ群落
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1日目はひたすら登る:
ヒエ平から緩やかに一の沢沿いを登ります。こんな調子ではなかなか高度は稼げないと先行きが心配になりますが、その心配は当たっていて最後に帳尻合わせのような急登が待っています。(^_^;
右に山の神を見て、さらに王滝ベンチ、烏帽子沢を経ても少しだけ傾斜が出てくる程度でなかなか高度は上がりませんが、胸突八丁の案内板を見るとそれを合図にしたかのようにいきなり急登になります。灌木と草付きなので恐怖感はあまりありませんが急斜面をトラバースする箇所があって注意が必要です。
さらに樹林帯の急登が続きこのあたりで体調不十分のためか完全にシャリバテになって、あとは青息吐息で登っては休みの繰り返し、やっとの思いで常念乗越にたどり着きました。途中花も多く(カニコウモリやモミジカラマツなどの森の花)また深いオオシラビソの森もきれいだったはずなのにそれどころじゃなくてもったいないことをしました。
常念乗越がちょうど森林限界で、コバイケイソウ群落が満開でした。
稜線の向こう側に常念小屋が待っていました。
左を見上げると、わっ、明日はさらにあそこまで登るのかと尻込みするほどの高さに常念岳が聳えています。右にはこれも高々と横通岳(よこどうしだけ)がのしかかっています。(実際は前衛ピークが見えているようです。)
常念小屋はお盆休みも過ぎたというのに大混雑でした。私たちの部屋は6畳に10人でした。ま、楽に横になって寝ることはできます。食事も美味しいし、水も豊富ですし、稜線の小屋としては快適です。ただ、、若い人たちのお行儀の良さにくらべ、酔っ払いオヤジの大声とおばさんグループのおしゃべりには閉口しました。
夕刻に稜線まで行ってみるとブロッケン現象が見られました。一の沢側に雲が湧き、反対の表銀座側からは陽が差していたので絶好のブロッケン現象のチャンスで、こんな不安定な天候の時はけっこう出会うことができます。
夜、星を見ようとしましたが薄雲がかかってわずかに見える程度でした。期待した満天の星は空振りでしたが、対峙する西岳の西岳ヒュッテと(たぶん)涸沢小屋の灯が真っ暗な空に浮くように光っていました。
常念乗越から常念岳 |
常念小屋 |
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荒れる縦走路
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雨と風の常念岳:
翌朝は小雨の中、はじめからレインウェアをつけて出発です。
体調は少しだけ戻りましたが、なにしろいきなりの急な登りで頂上が遙か先というのに早くも息切れがして、登っては休みの繰り返しになってしまいました。
そのうちに雨も本降りになっておまけに風も出て横殴りの雨に打たれる始末。一時は途中から引き返そうかと思ったほどです。
ともかく頂上だけでも踏もうと頑張っているうちに小雨になり頂上直前ではカメラを取り出すこともできる程度になりました。
ところがまったく統制がとれない旅行社の団体が狭い頂上で代わる代わる写真を撮ったりして動こうともしないので後続が渋滞してしまい、結局その団体をすり抜けながら頂上の祠をさっとカメラで撮って早々に通過しました。そんなわけで常念岳の印象はまるきり希薄です。(^_^;
頂上の一件でプリプリしながら常念岳から蝶ヶ岳への縦走を開始しましたが、すぐにご機嫌な気分になりました。常念岳直下から眺めた蝶ヶ岳までの縦走尾根の豪快なこと。荒れ気味の空模様と相まってまるで来るなら来いと挑発しているかのようです。
常念岳の下りは岩を縫って急下降しますが幸い濡れた岩でもよく靴底に食いついて雨でも特に危険は感じません。いろいろ豪快な岩場や奇妙な形の岩があったりして楽しい尾根ですが、あいにくの雨ですからとりあえず蝶までたどり着くのが第一です。 |
虹の上にぬっと姿を現した槍ヶ岳
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めまぐるしく変わる天候と景色:
徐々に雨も上がりましたがなかなか雲はとれません。それでも西岳までは視界が開けてきました。突然仲間が声を上げて指さす方を見てみたらなんと西岳をまたぐように虹がかかっていました。そして眺めているうちに一瞬雲が動いてその虹の上に黒々とした槍ヶ岳がぬっと姿を見せました。劇的な槍ヶ岳との対面です。
虹も槍ヶ岳もその後何度か現れたり消えたりしていましたが、やがて最低位鞍部に着くと尾根は樹林の中になり展望はなくなります。
樹林はミヤマハンノキの多い灌木帯からオオシラビソなどの針葉樹の森に変わり、しばらくは北アルプスの稜線らしからぬ深い森の中をたどります。
その後樹林の中の登降を繰り返しますが、ところどころに開けた草地がありそこにお花畑が広がっています。トリカブト、ハクサンフウロ、ウサギギク、オヤマリンドウ、クルマユリ、ミヤマアキノキリンソウ、シシウドなど晩夏の花が満開でした。
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深い森の道
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右手に小さな池を見るとそろそろ樹林もおしまいです。一気に大登りをして草地に出ます。振り返れば常念岳が高々と聳えていて、よくぞ歩いてきたものだと感心しました。高山らしい景観の中、岩礫帯を登ると小さいながら鋭く天を突く蝶槍頂上もすぐそこです。 |
蝶ヶ岳稜線:
蝶槍
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蝶槍頂上からは歩いてきた縦走路とこれからたどる蝶ヶ岳の稜線が一望です。天候もまずまずの回復具合で朝の荒天が嘘のようです。ただ残念なことに、槍ヶ岳、穂高岳の展望は部分的に雲がとれる程度で全山が一度に見えることはありませんでした。
ここまで来ればあとはルンルンの稜線漫歩、蝶ヶ岳ヒュッテまでのんびり遊びながらたどるだけ。
オヤマソバがきれいに咲く砂礫帯を少したどるとなだらかなわずかな高みがありここに三角点が設置されています。
当然ながら展望が開け、槍沢や横尾谷を真正面に見ることができます。しかし、槍ヶ岳や穂高岳は相変わらず雲の中です。
このあたりまで来ると蝶ヶ岳から足を延ばしてくるハイカーもちらほら。縦走はしなくともこのあたりまで歩けば蝶ヶ岳の魅力を充分に満喫できそうです。
三角点の先で右へ横尾への道を見送り、さらになだらかな砂礫の平坦尾根をたどると蝶ヶ岳ヒュッテです。小屋を素通りしてとにかく蝶ヶ岳最高点を踏んできました。あまり特筆するものもない頂上ですが、一応最高点なので写真をパチリ。
山名柱のある地点よりその奥の方がわずかに高いようで、そこに立ってさらにパチリ。
蝶ヶ岳ヒュッテは前日の常念小屋ほどの混雑もなく一人で1畳を占めることができました。食事も美味しく快適でした。常念小屋と違って水が不足がちなのか飲料水は有料でした。
山小屋の夕刻はまた楽しいものです。外に出て雲のとれるのを待ちましたが、槍も穂高もちょっとだけ顔を見せてはまた隠れるという具合で全山一望というわけにはいきませんでした。しかし逆光の穂高岳が金環食のように稜線の輪郭を光らせて不思議な景観を見せてくれました。くっきり晴れてはこうはいきません。どんな天候でもそれぞれの場面が用意されているということですね。 |
三角点付近から蝶ヶ岳最高点 |
蝶槍で晴れを待つハイカーたち 背後は常念岳 |
圧巻の槍・穂高:
前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳 モルゲンロート
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深夜、晴れ上がったようなので星を見ようと外に出てみました。あいにく下弦の月が煌々と全天を照らしていて降るような星を見るというわけにはいきませんでした。
しかし、その月の光の中に槍・穂高が青く高々と浮かぶように立っているではありませんか。なんという景観。こんな景観のために先人たちは「荘厳」という言葉を用意してくれていました。誰もが寝静まって私一人だけが槍・穂高に圧倒されて佇んでいるなんて。わぁきれいとか素晴らしい景色だとかとはまったく別の表現しがたい感覚にとらわれました。
翌朝は素晴らしい晴天で明けました。東の空が明るくなったのを合図に早速稜線に出て日の出を待ちました。安曇野は雲海の下、そして空は茜色に輝いて浅間山付近から太陽が登りました。
振り返れば槍・穂高はモルゲンロート。これ以上の絶好の天候はありません。赤く染まる槍・穂高の岩峰群を前にしてただただ圧倒されるばかりです。 ここからは穂高連峰が真正面になり槍ヶ岳はやや右に見ることになります。そのためか穂高ほどには赤く染まりません。でも槍ヶ岳はやっぱり槍ヶ岳、天を突いてその存在感は圧倒的です。 |
槍ヶ岳 モルゲンロート
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さらにうれしいのは一般的なルートではなかなか見ることのできない横尾本谷のカールや横尾右俣のカールが真正面に見えることです。以前涸沢からの帰りにパノラマコースを歩いて屏風のコルから見たこともないカールを初めて見てあれはなんだと少し興奮したことがあります。エキスパート以外見ることさえなかなかかなわないカールをこの蝶ヶ岳からは真正面に見据えることができます。 |
蝶ヶ岳ヒュッテと槍ヶ岳、大キレット、北穂高岳
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さようなら蝶ヶ岳:
いよいよ下山です。
3日目にして初めての快晴です。すっきり晴れた槍・穂高の姿をやっとカメラにとらえることができました。遠く、野口五郎岳、水晶岳、鷲羽岳なども視野のうちです。左に目をやれば乗鞍岳、御嶽もなだらかな山体を横たえています。
歩いてきた常念岳からの稜線も見えますがいよいよお別れです。
下山地からの林道が工事のため通行可能時間が制限されていてのんびりはできません。
徳沢への下山路・長塀尾根(ながかべおね)の道を見送りさらに大滝山への縦走路を分け、いよいよ一気に下山にかかります。
すぐにミヤマハンノキやハイマツの樹林帯になりますが草地のお花畑もいくつかあってトリカブトなどが満開でした。
やがて針葉樹の深い森になり、まめうちだいら、力水の水場(10頭ほどのニホンザルの群れに会いました。)、三股の吊り橋を経て三股登山口に降り着きました。
車が入れるのはさらに800mほど先で、林道を三股駐車場まで歩かなければなりません。
三股駐車場からは蝶ヶ岳の稜線を見上げることができます。改めて北アルプスの稜線の高さを実感しました。 |
下山路から常念岳を振り返る |
壮絶な常念沢 |
常念岳 蝶ヶ岳の花(画像クリックで拡大)
クルマユリ |
シモツケソウ |
ハクサンフウロ |
サラシナショウマ |
センジュガンピ |
ホツツジ |
ソバナ |
トリカブト 詳細不明 |
ウサギギク |
ヤハズハハコ |
ヤマブキショウマ |
ヨツバシオガマ |
クロトウヒレン |
キンコウカ |
蝶ヶ岳下山路お花畑 |
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【便利帳】 |
トイレ:ヒエ平登山口、山小屋、三股登山口、三股駐車場 |
【収穫】(^_^; |
32片 590g 1日目のみ。2、3日目は雨と疲労でゴミ拾いの余裕なし。(^_^; |
【寄り道】 |
温泉:ほりでーゆ〜四季の郷 三股への林道入口付近 500円 |