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  唐松山 1079.3m
圧巻、ぐるり大展望
山の魅力と標高とになんの相関もないことは誰しも異論はないでしょうが、新潟の低山を歩くとさらのその感を強くします。
今年すでに4回目の新潟の春の山、すっかり魅入られてしまったと言っていいくらいです。なんといってもその魅力は咲き乱れる花、花、花。そして残雪に映えるブナの新緑。豪雪に磨かれた急峻な沢筋や周囲の雪山の展望もまた魅力です。
先年登った下権現堂山、上権現堂山の尾根続き、さらに奥まった位置に唐松山はあります。その展望の素晴らしさを聞いては、これは登らないわけにはいかない、と梅雨入り前の絶好の時期を狙って出掛けて来ました。
地震と豪雪の影響が残っていて思っていた以上にハードな山でしたが、その豊富な残雪とブナの新緑の対比の美しさといい、他では得難い展望といい、また春の花々の賑やかさといい、こんな魅力的な山はそうそうあるものではありません。
【日程】 2006年6月4日
【山域】 新潟
【天候】 晴れ
【地図】 1/25000大湯 須原
【アクセス】 関越自動車道小出ICからR17、北上し陸橋上四日市交差点からR252へ。関越道をくぐった先の中島交差点で右折。道なり。中子沢(ちゅうしざわ)の先で林道へ左折。
【駐車地】
デブリに阻まれる
手前の路肩に駐車
林道に入ってほどなく雪崩の痕の大量の雪塊に阻まれやむなく手前の路肩に駐車しました。
山菜採りの地元の車がたくさん駐車していました。
【コース】 駐車地 − 登山口 − 滝見台 − 権現堂分岐 − 鏡池 − いっぷく平 − 猫岩 − 唐松山頂上(往復)
約7時間 健脚向き

         唐松山頂上 背後に未丈ヶ岳

   滝見台付近からいっぷく平、猫岩、唐松山と続く縦走尾根を望む
 
         越後駒ヶ岳 八海山

【メモ】
登山口
いきなりデブリに阻まれて林道歩き:
中子沢の先から林道に入りいくらも走らないうちに左斜面からの雪崩の痕に阻まれました。十数台の車がやむなく路肩に停まっていました。そのほとんどが山菜採りの地元の皆さんのようで、山菜をはち切れんばかりに詰め込んだ背負い袋を背負って次々に戻ってきます。
ここで山菜採りの皆さんや沢歩きの青年から、林道は40分ほど歩かなければならないこと、猫岩は一部崩壊して通過は困難だということ、先行して何人かのハイカーが入山していることなどの情報を得ました。
出発が遅くなってしまった私たちには40分の林道歩きはちょっとつらいですが、でもこの林道は雪が解けたばかりの斜面にカタクリ、オオバキスミレ、イカリソウ、ムラサキヤシオツツジなどが咲き乱れていてけっこう楽しい道です。タニウツギがちょうど満開で、強い日差しのせいか、濃いピンクが暑苦しいほどでした。
右に2つの溜め池を見るとほどなく広場があり、ここが昔の入山点です。赤テープがそれを示してはいますが、しかし車道はさらに続き、200mほど先で左側に溜め池を見ると右に登山口標識があります。

いきなり背中あぶりの急登:
滝見台より不動滝
登山道に入るといきなり急登が始まります。一本調子の登りです。あたりは灌木で日差しを遮るものはなく折りしも異常な暑さのため出鼻から消耗してしまいました。
ぐんぐん高度を上げ、最初の休憩ポイント滝見台に着くと、眼前に不動滝が残雪からの水を集めて豪快に流れ落ちている景観を眺めることができます。背後には越後駒ヶ岳と八海山が圧倒的な高さで聳えています。また行く手には上権現堂山から唐松山までの稜線を一望することができます。しかしこれから登らなければならない稜線までの道筋が頭上に見え、思わずため息が出てしまいました。急登は続きます。

崩壊の進む登山道:
林道で聞いた話では、先年の中越地震の影響でできたクラックにこの冬の豪雪が加わり崩壊が進んでいるとのことでした。なるほど滝見台から先では登山道のあちこちが崩れて危険な状態になっています。この状況は稜線でも同じことで、山稜が割れたり登山道が崩れたりしている箇所がいたる所にありました。

残雪がべったりと残る稜線からいっぷく平への急登:
思索する(?)モリアオガエル(たき氏撮影)
ブナの木陰となると上権現堂分岐で、左に登ると上権現堂山、右に下降すると唐松山への稜線です。唐松山に向かう稜線の道は尾根のわずか左側に切られていますが、おおむね残雪に隠されています。しばらくはブナの緑と雪田の白がまぶしい気持ちの良い道で、足下にはたくさんのイワウチワが咲いていました。その雪田の表面には昨年大豊作だったブナの実がびっしりと落ちています。
しかし、残雪の量が多く道形を失いがちですし、何カ所か雪の急斜面をキックしながら登らなければならないところもあり、また左側へかなりの傾斜度で落ち込んでいる雪田もあるので注意が必要です。
途中、鏡池の案内板がありますが、その姿はすっかり雪の下で、わずかに雪田の端が水たまりとなっているのが池のあることを示しているに過ぎません。別動した仲間の話ではここでモリアオガエルを撮ったと言うことですが、私たちは気付かずに通り過ぎてしまいました。
気分の良い雪上歩行もそう長くは続かず、長い急登が始まります。所々崩壊地もあり気が抜けません。喘ぎ登るといっぷく平。大展望です。左に守門岳、浅草岳。前方に毛猛山、桧岳、この山群はなかなか平地からは眺めることはできません。そして右に越後駒ヶ岳と八海山、とりわけ駒ヶ岳はピラミダルに高く聳えこの山域の盟主たるにふさわしい端正な姿です。
駐車地から約2時間強、ここで昼食としました。

崩壊した猫岩から展望の唐松山へ:
猫岩 崩壊した部分が茶色に見える 背後は上権現堂山
いっぷく平から小さな登降を繰り返すとやがて次のポイント猫岩です。駐車地で、猫岩が崩壊している情報を得ていたので迷わず右の巻き道をとりました。ところがこの巻き道も藪がちで崩壊している箇所もあって油断できません。
猫岩の先の尾根に回り込んで振り返ると確かに一部、猫の耳の部分が崩壊しています。上部がどうなのかは判りませんが通過は避けた方が良さそうです。
このあたりから見る唐松山はべっとりと雪をまとって魅力的です。前峰と本峰が前後に並んで、頂上まではその前峰を越えて登り返さなくてはなりません。猫岩から前峰までは小さな登降があり、その鞍部ではタムシバやブナの新緑を楽しみながら大きな雪田を歩くことになります。このあたりがコース中もっとも山深い雰囲気のところで、新潟の低山の魅力を満喫することができます。
最後の急登をこなすと待望の唐松山頂上。息を呑む大展望です。いままで唐松山に隠れていた東側の展望も加わり、ぐるり360°遮るものなしです。平地からはなかなか姿を見ることの出来ない桧岳、毛猛山など黒又川ダム周辺の山々が新鮮です。黒又川ダム周辺の山々は道もなく私たちのレベルではとうてい山頂を踏むことは叶いませんが、こうして残雪の姿を眺めるだけでも山深さをひしひしと感じて嬉しい気分になります。
毛猛山群の右手には未丈ヶ岳が眼前に優美な姿を見せています。ハードな登高を強いられると聞きますが、その姿はじつにたおやかです。
ぐるり展望を列挙すると、主だった山だけでも、先ず左手から守門岳、浅草岳、毛猛山、桧岳、未丈ヶ岳、遠く会津駒ヶ岳、さらに遠く燧ヶ岳、中景に戻って荒沢岳、兎岳、そして大きく越後駒ヶ岳、八海山、なんという圧倒的な眺めでしょう。そして近景に背後の上権現堂山、前方の大倉山から明
山肌を埋める残雪
神山への稜線続き、松川沢を隔てて高鼻山など初耳ながら魅力的な山容の山々、どれもこれも雪を残して山深い雰囲気を感じさせます。明神山は地形図を見ると山頂に明神池を配して以前から気に掛かっているのですが、あるサイトの登頂記によれば踏み跡も薄い難儀な山のようです。私たちにはこの唐松山が最奥、限度ということでしょうか。
しかし、行き交うハイカーに声を掛けて聞いた限り、唐松山でさえやはりなかなか大変な山で途中でギブアップしたグループが多く、山頂を踏んだ人は単独2人、2人連れ1組、そして私たち4人のたった8人に過ぎません。こんな素晴らしい山なのになんとももったいない気がします。
山岳展望を堪能して、山頂を後に下山にかかりましたが、往路ですでにヘバり気味でしたので、下山の大変なこと。おまけにこの時期としては稀な暑さのため水も残り少なくなり地獄の下山となりました。しかし、残雪とブナの森、イワウチワ、ユキツバキなどの花々、下山の我々の前方にでっかく聳える越後駒ヶ岳、と最後の最後まで私たちを離さない魅力がこの山にはありました。
駐車地に戻ったときにはすでに時計は5時を指していました。
ブナの森の雪田             

桧岳と折り重なる毛猛山 遠く霞む会津朝日岳
【便利帳】 トイレ:中子沢砂防公園
コンビニ:小出で
付記:この時期、ブユなどが多く、虫除け剤など用意すると便利です
【収穫】(^_^; 12片 30g
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