【メモ】 |
登山道より見下ろす棚田
|
こんな山奥に水田:
高柳町から道路はくねくねと蛇行しながら一気に高度を上げ、だいぶ山中に分け入ったなと思うと突然集落が現れます。磯之辺地区です。さすが豪雪地帯、関東に住む私の安普請の家とは違ってがっしりした造りの民家が数軒、たたずまいにも風情があります。
磯之辺を通り抜けると目の前に黒姫山が姿を現します。唐突に、と言う表現がふさわしい現れ方です。あたりは広々とし、正面の黒姫峠から雪に削られた谷が広く落ち込んでカールそっくりの地形です。ここにはスコーンと空に抜けたような明るさがあります。
周囲は棚田100選に選定されている梨の木田地区棚田、おりしもトラクターが代掻き作業に精を出している最中でした。
黒姫峠への登路は消失:
最初の計画はこの棚田から入山して黒姫峠経由で頂上へ達し、頂上からは直接黒姫山キャンプ場へ下って周回しようというものでした。しかし、農作業の方に伺ったところ黒姫峠への登路はないとのことでした。また地元ハイカーのお話でも、先年の中越地震の際に谷全体が崩壊し、ここから峠への通過は不可能との
棚田上部より黒姫峠を見上げる
|
ことでした。見上げた感じでも、急峻であちこち崩落してどこをどう登ろうと峠に達するルートは組めそうもありません。残念ながら往復コースをとらざるを得ません。新潟の山ではコースを外れると猛烈な藪に阻まれますので、私のホームグラウンドの栃木群馬南部の山のように好き勝手に藪山を歩くわけにはいきません。
本来、自動車道路で棚田を通過してキャンプ場まで行けるのですが(道路はさらに先に続いています。)、この季節には棚田の先で大きな雪塊に阻まれてしまい、この棚田の路肩に駐車するしかありません。
道路上にのしかかった雪塊はたぶん黒姫峠から落ち込む谷からの雪崩によると思われます。これを越えるとまた舗装道が続いています。この先に黒姫山キャンプ場がありここが登山口となっています。私たちは鬼ころし清水の落ち口脇からショートカットをしました。
すぐにキャンプ場上部に出て、ここから登山道がスタートします。
春の花が続く登山道:
すでに舗装道脇でもオオバキスミレ、カタクリ、スミレサイシン、ショウジョウバカマなどが咲き乱れていましたが、登山道に入るとさらにたくさんの花が迎えてくれました。鬼こ
かわいいブナの芽吹き・ブナモヤシ
|
ろし清水を右に見て、いよいよ急階段が始まるとカエデの森です。新緑が目映いばかり。やがて森がカエデからブナになると所々残雪の上を歩くようになります。昨年はまれに見るブナの実の大豊作だったようで道には敷き詰めたようにブナの実が落ちています。それが一斉に芽吹いて、可愛い双葉がたくさん見られました。「ブナモヤシ」と呼ぶそうです。あまり可愛い姿を表現する呼び名とも思えませんが、なんと、これ、山菜として食するんだそうで、なるほど、それでブナモヤシ。
登山道はかなり急で、その上、木段の段差が大きくけっこう難儀な道です。でもこの急峻さでは木段がないととても登れません。苦しい登りではありますが、ブナの新緑が美しくまた所々展望ポイントもありますので楽しい登路です。右に棚田と棚田から双曲線を描いて黒姫峠にせり上がるカールのような景観を見るポイントではしばし見とれてしまいました。また、東頸城丘陵と魚沼丘陵越しに見る越後三山は圧巻です。
鵜川神社と山頂の展望:
越後三山
|
やがて広い平地に飛び出します。そこは鵜川神社で、北に海側の展望と東に魚沼、下田方面の山岳展望が広がっています。とりわけ、眼下に梨の木田の棚田を見て、その先にうねうねと続く東頸城丘陵と魚沼丘陵、そして越後三山、守門岳、粟ヶ岳まで広がる東側の眺望は素晴らしく、地元のハイカーの話ではこの時期では滅多にないことだとのことでした。関東の雨を避けて遠路出かけてきた甲斐もあるというものです。ただ、下調べした段階では展望にはあまり恵まれないと判断して広域図も展望図も持ち合わせていなかったため、あこがれの下田山塊や名山ひしめく上越、会越の山々の同定が難しく、残念でなりません。
神社から一投足で2等三角点峰、黒姫山頂上です。石祠と避難小屋があり樹木に囲まれています。しかし、南西方向に開け、西頸城山地と妙高山や火打山などが展望できます。こちらの西頸城の山々もうねうねと折り重なるように低山が続き、まだまだ雪も多く、独特の景観です。それぞれ山名を持つ個性ある山でしょうが、まったくこのあたりに不案内なのが残念です。
全体、この山の展望について言えば、確かに360°の展望ではなく切れ切れの展望になってしまいますが、私たちの目の構造が360°に対応していないのだから、まあ、それでも充分なわけで、位置としてこれほど恵まれている山はあまりないはずです。また、遠望ばかりでなく、頸城丘陵を見下ろす景観の見事さも忘れがたいものです。
妙高山方面の展望
|
大雪田とブナ林の稜線:
雪田から米山
|
登山道は頂上を越えて続いています。そちらの下調べはまったくしていないのであまり深入りはできませんが、シラネアオイがあるという話を聞き、少しだけ下ってみることにしました。
足跡もなく静かな尾根で、すぐに右に大きな雪田を見ます。さらに下ると左にも大きな雪田があり、こちらは急斜面でブナの根方の雪も融け始めていました。
あまり下ると登り返しがきついので先ほどの雪田まで戻り、雪に押さえつけられて倒れた木に腰掛けて昼食としました。北風が心地よく、また米山に対峙して展望も抜群、そして何より心和むのは周囲の圧倒的なブナの森です。この雪田は佐渡も見える絶好の展望地でもあります。周囲でときどき雪をはねのけて樹木が跳ね上がっていました。
で、シラネアオイはというと、予備知識もないので当然ですが、見つかりませんでした。
下山も楽しい花の道:
花や新緑を楽しみながら、また展望ポイントでしばし見とれたりしながらのんびりの下山となりました。
鵜川神社脇で、仲間がなんとカモシカと遭遇。低山といえど、やはり山深いのだと実感しました。
|