庚申山1892m コメツガ林、シロヤシオ群落などまた違った魅力も
私事ですが、庚申山〜皇海山は私自身にとっては特別な山です。約40年前、紅顔の美少年!であったころ初めての登山らしい登山をしたのが庚申山〜皇海山だからです。地味な山の最右翼と言えるこの縦走が私を山に親しくさせるきっかけとなったわけで、いわば人生を豊かにしてくれたというか、こんな世界さえ知らずにいたらもっと勉学も仕事もなんとかなったのに、というか...(^^;
その後、皇海山は群馬側からの登路を知って再訪しましたが、庚申山はなんでかそのまま縁遠くなっていました。
今回、仲間を誘って、昔通り過ぎてしまったお山巡りをおまけに付けて庚申山だけ登ってきました。
いまもなお深いコメツガの原生林に覆われて昔のままの魅力をそのまま保っていました。また、鮮明な記憶にあるあの庚申山から望む皇海山の勇姿にも再会することができました。
【日程】 2002年10月27日 【山域】 足尾 【天候】 晴 【地図】 1/25000皇海山
【アクセス】 国道122号で足尾に入ってすぐ、銀山平方面に左折。銀山平キャンプ場、国民宿舎かじか荘を左に見てわずか走ると右に舟石峠への道を分けて進入禁止となります。 【駐車地】 車止めのやや手前に大きな駐車場があります。20台程度駐車可。それでも満車になります。その場合、車止め前にも駐車しているようですし、舟石峠方向に少し登って路肩に止めることも可能ですが、まあ、これは禁じ手で、観念して銀山平に停める方がいいかもしれません。 【コース】 駐車場−天狗の投石−一の鳥居−鏡石−二の鳥居−庚申山荘−大胎内−庚申山−見晴台−大胎内−お山巡り−笹尾根−二の鳥居−一の鳥居−駐車場
実行程約6時間 一般向き
庚申山見晴らしより皇海山 |
【メモ】 帰りが思いやられる長い林道:
銀山平からさらに車道を走ると左手に大きな駐車場があります。この先に車止めがありますのでここから林道歩きとなります。
林道は庚申渓谷沿いに続いています。時々ガイドブックで庚申渓谷の美しさに触れているのを目にしますが、沢が見下ろせるのはほんの数カ所で、紅葉、新緑の時季以外はおおむねつまらないただの林道歩きです。幸い紅葉が始まろうかという時期で、見上げると高所ではすでに色づき始めていました。この紅葉が帰路に劇的な変化をするとはこのときには思いもよりませんでした。
途中、いくつかの滝や天狗の投石の奇観などを楽しみもあるものの、やはり林道歩きはうんざりします。帰路はつらいだろうな。(^^;
一の鳥居からやっと山道:
朱色の一の鳥居を見ると長い林道もおしまい。すぐ先の庚申七滝は帰りの楽しみにして、鳥居をくぐってしっとりした登山道をたどります。今までとうって変わって素晴らしい景観です。やや色づき始めた落葉樹林の林床は背丈の低いミヤコザサに覆われ、まさに「足尾の山」です。さして急な登りもなく、これではいつになったら1800mまで上がれるのかと思うほどゆっくり高度を上げていきます。でもだらだら登りとは言え、林相も美しく、いくつもの奇岩を眺めながら歩きますので決して退屈なことはありません。かつての信仰登山の名残の丁目石などもあり、休みをとるタイミングにも事欠きません。
一の鳥居
途中庚申山のほぼ全容が見渡せる地点があります。屏風のように立ちはだかる特異な山体を見て、これからあれに登るのかと思うと気合いも入ります。それにしても今までのだらだら登りのツケで、まだ全然登ったことにならないのに気づいてしまう山体の高さです。
鏡岩、夫婦蛙岩、二の鳥居とたどるとかつての神社跡、そしてほどなく庚申山荘です。
昔と一変した庚申山荘:
足尾の山は隅々まで歩いたような顔をしてはいますが、実は庚申山は40年も前に登ったきり。(^^; ひねくれたコースばかり歩いているので肝心の足尾の盟主に縁遠くなっていました。当然ながら小屋は一変、立派なものになっていました。昔、神主さんが小屋を守っていて、早朝、登山者さえ眠っているうちから太鼓をたたいてお祈りを始めるので閉口した記憶があります。その小屋の建っていたあとが登山道脇にあります。今はなんと立派などっしりとした小屋でしょう。ここでトイレタイムをとっていよいよ庚申山の登りにかかります。それにしても山体に取り付くまでのアルバイトの大変さ、中級の標高の山にしてはまだまだ自然が保たれているのもこのおかげでしょう。
山荘手前の美しい林相
いきなり始まる岩場の急登:
これまでのゆったりした登りですからどこかで帳尻合わせが待っていることは覚悟していましたが、小屋を過ぎるといきなり岩場の急登となりました。さほど危険な箇所はありませんが、この先、喘ぎ喘ぎの1時間となります。展望のよいポイントもいくつかあり、小法師尾根や安蘇山塊、前日光高原などが眼前に広がって、さらに安蘇山塊の先には関東平野が光っています。
岩を縫って登る楽しいルート取りなので息は苦しくともつらい登りではありません。やがて美しい落葉樹からコメツガ林となるとやっと急登から解放され頂稜の一角にたどりつきます。この頂稜部の原生林はじつに見事です。(展望地が混雑していたらむしろこのあたりで休むのもしみじみとしていいかもしれません。)
頂上は単なる通過点、圧巻は見晴台からの景観:
頂上付近の原生林
登山道が交錯してうっかりすると通り過ぎてしまいそうな庚申山頂上ですが、山名板もあるので一応頂上だけは踏んで、休憩はさらに進んだ先の見晴台で。西、北の二方に開けて大きな展望を得ることができます。なんと言っても皇海山の勇姿、まさに足尾の盟主です。松木沢源頭に向かって落ちる幾筋もの薙が特徴的です。さらに北に国境平、釜五峰と主脈が走り、そこから一気に落ち込んだ松木沢源頭一帯が紅く染まる景観はなんと雄大でしょう。また鋸十一峰と呼ばれる庚申山から鋸山に向かう峰々、さらに南進して前袈裟丸山に至る長大な袈裟丸連峰、と足尾の核心すべてを一望するここからの展望は第一級です。それにしてもなんと山深い両毛国境尾根。
お山巡り:
厭きることのない見晴台ですが、帰路も長いので下山にかかりました。一時通行止めとなっていたお山巡りコースも整備が済んだということなので、そちらをとることにしました。大胎内から左に別れると鎖、梯子、橋などが連続して登ったり下りたり忙しい道となります。危険箇所といっても西上州などに比べればほどよく整備もされているので恐怖を感じるということはありません。時間配分を考えた上でぜひともこのコースを組み込んでいただきたいものです。
眼鏡岩
思いのほか時間もかかりますが、降りにかかると景観が一変してのどかな笹尾根となります。アカヤシオ、シロヤシオが群生していて、春にはにぎやかな尾根になるはずです。つつじにしては巨木と言っていいような株も多く、満開の時季に訪れればさらに印象深い山行となることでしょう。
やはり帰りの林道歩きには参った:
お山巡りコースは気分のよい笹尾根を下って神社跡で合流します。あとはダラダラと一の鳥居まで下って林道に出ます。
一の鳥居の少し上で右に折れると庚申七滝。なかなか見事な滝で、中段に橋があって上半分を見上げ下半分を見下ろすことができます。滝に沿って遊歩道がありますが、現在通行止めとなっています。
滝の脇が林道終点となっていて、一の鳥居までは30mほど。
そこからお約束通りの林道歩き、駐車場まではうんざりするほど歩かねばなりません。
それでも私たちは幸運でした。朝は尾根筋が色づいている程度だった紅葉が、なんとたった半日ですっかり染まってしまっているではありませんか。なんとも不思議な現象でした。頂上での寒さは尋常ではなかったのですが、その寒気が原因でしょう。山がたった数時間で劇的に色づいてしまうとは。
【便利帳】 コンビニ:黒保根道の駅の隣
トイレ:キャンプ場、庚申山荘
水場:小屋の先にはなし