【メモ】 |
ちょっと怖い早朝の登山道:
勢い込んでペンションを出たら林道入口に4時半頃着いてしまい、まだあたりは闇で星がきれいに輝いていました。すごい星の数で星を見るためにだけ出かけてきてもいいくらいです。
でもこの闇夜の中を林道に突っ込んでいく気にはなれず、開陽台まで走って夜が明けるのを待ちました。
開陽台には15台ほどの夜明かしの車が駐車していて日の出を待っていました。元気な連中はテーブルを出して鍋を囲んでワイワイやっていましたが、寒くなかったかと聞いたら「ええ、寒いっす」だと。やっぱり若くても寒いいか。(^_^;
薄明るくなったところでまた林道へ戻り意を決して登山口を目指して突っ込んでいきましたが、樹林の中はまだ暗くあまりいい気分ではありません。途中の旧登山口で登山届けを書いて、さらにダートを走ると小広い駐車地のある登山口です。
尾根に出て武佐岳を仰ぐ
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まだ薄暗く、身支度をしながらどうしたものかと思っているうちに空も青くなって、そういつまでもグズグズしているわけにもいかないのでいよいよ歩き始めました。
背丈の高い笹とトドマツの林の中の登山道、それも一番乗りですから要らぬ出迎えなどがぬっと現れはしないかとビクビクものです。1ヶ月ほど前に近くの当幌川に鮭の遡上を見に行ってヒグマに襲われ死亡したというニュースを聞いているのでなおさらです。
道はかつての林道らしく歩きやすいものの平坦で一向に高度が上がらず、いずれこの借りを返す急登が待っているはずです。
気持ちの良い尾根:
避難小屋の憩清荘が現れると一段急登を越えて尾根道になります。
要所要所に合目標識がありよい目安になります。頂上が4合目という変則的な表示だとガイドブックなどで触れられていますが、現在は一般的な頂上が十合目という割り振りに変わっています。
はじめのうちはだだっ広い尾根で、ダケカンバの大木の緩斜面から目指す武佐岳がかなりの高さで構えているのを仰ぎ見ることができます。まだあんなに登るのかとちょっとうんざりするほどの大きさです。
一段大登りをするとやがてダケカンバは灌木となり笹も背丈が低くなって明るい尾根道となります。右手の展望が大きく開けて根釧台地の広がりが目に飛び込みます。なんという広さでしょう。
展望ピーク:
8合目の小さなピークに登り着くとさらに展望は大きくなります。周囲の山も姿を現し、とりわけ隣の俣落岳、サマッケヌプリ、標津岳が間近に大きく頭をもたげています。見上げれば武佐岳まではまだ急登を強いられそうです。
朝日に輝くダケカンバ灌木帯
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休憩にちょうど良い小ピークですが、いかんせん風が冷たくてそうそう長居もできません。
腰を上げると早速急登が待ちかまえています。
大展望の武佐岳頂上:
しばらくは我慢の急登をひたすらこなすことになりますが、それもそういつまでも続くことはなくやがて双耳峰の鞍部に登り着きます。道は左のピークには向かわず高い方の右のピークにのみ登ることができます。(下山時に左のピークへ踏み跡はないか探しましたが密藪に阻まれました。)
頂上には大岩がデンと構えていて三角点はその先にあります。
まさしく遮る物なしの大展望です。
まず根釧台地の広さです。関東のどん詰まりで育ったため裏山から見る関東平野の広さには慣れているものの、それは街がありビルがあり、林があり畑がありと全体広くともなんだか果てしないような広がりは感じられません。でもここで見る広さには果てがないかと思わせます。まさに大地と呼ぶに相応しい広さです。
その台地が左に海に落ちるところが野付半島、キラキラ光る海に特異な地形を突きだしています。
そしてその海の向こうにくっきりと国後島。その長い地形をやや手前から見ることになるので泊山と羅臼山が重なって見えます。
知床の山々も視界の中ですがあまり好天ではないらしく羅臼岳はうっすらしていました。でも遠音別岳の特徴ある姿はくっきり見えました。さらに左には斜里岳、ぐるっと左に回ってカムイヌプリと西別岳、その奥に雄阿寒、雌阿寒、阿寒富士までも見通せました。また周囲の山も先ほど展望ピークで見た俣落岳、サマッケヌプリ、標津岳などが連山を形作っています。すぐ北には尖峰が異様な山姿を見せています。この尖峰はここから見ると台形の山でどこが尖ってるのかと思いますが、標津方面から見ると文字通り尖って見えるためこの山名なのだと思います。
そしてその尖峰周辺の山深さにはほれぼれします。ひたすら森、という感じです。川北温泉はあのあたりかななどと眺めていたらはるか下方に国道の金山橋が見えました。
武佐岳頂上からの展望
国後島 中央に泊山 左にうっすら羅臼山 |
斜里岳 |
尖峰の先に海別岳 |
西別岳、カムイヌプリ(摩周岳) 奥に阿寒の山 |
花は終わってしまったものの花時ならば楽しいはず:
途中展望ピークあたりにキバナシャクナゲらしき小灌木がありましたが、少ないながら春夏にはいろいろ花も咲くようです。いろいろ花柄となった植物がありました。ガイドブックによればこの頂上には北海道の高山に点在するというまだ見たことのないミヤマオグルマが生育しているということでちょっと探してみました。はたして大岩の基に白毛に被われた葉をつけたミヤマオグルマを見つけました。もちろん花はとっくに終わっています。その葉はロゼット状になっていましたのでこのまま冬を迎えるのでしょうか、それとも地上部はこれから枯れてしまうのでしょうか。
いつまでもいたいようなじつに好ましい山頂ですが、寒いし、帰りのフライトの時刻もあるので下山にかかりました。
登るときは気付きませんでしたが、粘土質の滑りやすい箇所が多く、スッテンとやってしまって膝を軽く捻挫してしまいました。単独でしたので肝をつぶしましたが幸い下山が困難になるほどのことはありませんでした。
中腹で単独ハイカーに一人、小屋から下で数パーティに会いましたが、こんな素晴らしい山にしては登山者は少ないようです。
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【寄り道】 |
ついでの一巡り:
知床峠から羅臼岳
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前日は知床へ。
鮭の遡上と産卵を見ました。標津川、忠類川、薫別川、羅臼川、サシルイ川などが知られていますが、そのいくつかの川を覗いたところもっとも多かったのは陸志別川というなんの変哲もない小さな川でした。橋上から覗くと力尽きた鮭の死骸があちこちに沈んでいて、それを乗り越えるようにこれから産卵する鮭が遡上していきます。メス鮭が体を横にして川底の石に擦りつけるように産卵するとすぐさまオス鮭が放精します。命をつなぐ生き物の迫力です。
さらにちょっと足を延ばして知床峠まで車を走らせました。。観光客でごった返しているかと思いきや、トイレがあるだけの駐車場ですし寒いせいか観光バスもさっさと下っていくので意外に静かな峠でした。見上げる羅臼岳が圧巻でした。
次ぐ日、武佐岳から下山後、開陽台に寄ってから三友牧場へ。この牧場は牧草だけで飼育した牛の牛乳からチーズを造っています。ちょっと値段は高めですが本物のチーズです。珍しいカチョカバッロと山のチーズを買ってきました。
まだフライトまで時間があったので次回にと思っていたパッチワークを探しに。中標津で以前気に入ったパッチワークを見たことがあって、それが夢なんとかという署名があったというだけの手がかりで聞いて探したのですが、やはりここでも北海道の人の親切さが心に沁みました。次々とリンクのように心当たりを教えてくれたり電話掛けてくれたりしていただいて、なんとなんと中標津の住宅地の中にその工房を探し当てることができました。「夢工房」の小さな木彫りの看板があるお宅に押しかけて工房を見させていただきました。パッチワークばかりか陶芸もなさっているという奥様はちょうど一階の陶芸工房で作品を仕上げているところでした。2階がパッチワークの工房になっていて、そこに飾ってあった作品を譲っていただきました。というより半ば強引に。(^_^;
山ばかりか標津、知床、中標津とあちこち巡った大急ぎ旅は大満足で、また来ようと決めて空港をあとにしました。
エゾシカ |
ミルクロード |
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【便利帳】 |
トイレ:展望駐車場(旧登山口)
コンビニ:中標津の街から出るとありません。飲料自販機が開陽台に。 |