流石山、大倉山 ながれいしやま1812.5m おおくらやま・たいくらやま1885m
栃木県随一の花の山
流石山は栃木県随一の花の山です。大峠からの草付き斜面はたくさんの高山植物に彩られ急登も忘れてしまうほどです。
ここは那須の奥の奥、あまりに奥なので裏から入れば簡単です。(^^;
会津側の下郷町から大峠を越えて三斗小屋宿を抜け日光北街道へ出る道は会津中街道(あるいは会津東街道)と呼ばれかつてはかなりの往来があったようです。今も一里塚や石畳の跡が所々に残っています。
この大峠は戊辰戦争で戦場となったところで慰霊のためか峠には小さな地蔵様が祀られています。こんな明るい峠を血で染めたという歴史を思うのも山旅の一つの意義かもしれません。
この日は前日までの大雨のためか、それとも福島原発事故の放射能を案じてか、私たちの他には山に入ったハイカーはなく咲き乱れる花々を独り占めでした。
流石山頂上
大倉山頂上
花の咲き乱れる登路
会津中街道一里塚跡
【日程】 2011年7月31日 【山域】 裏那須 【天候】 雨のち曇り(霧) 【地図】 1/25000那須岳
【アクセス】 東北道白河ICから国道289号へ。(ICから国道4号を白河方面へ向かってすぐ左折してショートカット。)
甲子トンネルを通過してほどなく道の駅しもごうが左手に。
道の駅しもごうから1kmほどで左に観音沼方面への道が分かれます。この道を通れば下郷、養鱒公園と迂回する必要がなくかなり走行距離と時間の節約になります。
養鱒公園〜観音沼の道路に突き当たったら左折して観音沼、日暮の滝を経由して駐車地まで。【駐車地】 車道最奥までは入れません。進入禁止の看板のある駐車広場に駐車。
20台ほど。【コース】
駐車地 − 車道終点 − 大峠 − 流石山
− 大倉山(往復)
実行程約6時間 一般向き
【メモ】
トンネルを抜けると...:
石畳道の跡
東北道を走っているうちは曇り空でしたが、甲子道路を登るうちに雨模様となりトンネル手前ではとうとう本降りになってしまいました。これはどこか遊べる転進先を考えなければと思いながらトンネルを抜けるとなんとわずかながら青空も覗く明るい空になっていました。
那須連山の南東と北西でこれだけ違う天候にびっくりでした。
トンネルから少し下ると道の駅しもごうがあります。トイレ休憩にも最後の買い出しにも好都合です。
山中深く車で分け入る:
国道から分かれて野際新田への近道を通って観音沼まであっという間です。甲子トンネルが開通する以前は塩原から会津田島経由で養鱒公園まで来てそこから観音沼まで延々と車で走らなければなりませんでした。私たちも便利になりましたが、中通りと直通になって地元の皆さんの利便はいかばかりでしょう。
観音沼を過ぎるといよいよ山道となりますが、舗装状態も良く快適に走れます。最後は舗装もなくなりデコボコ道となりますがそれでも普通車で走れる程度には整備されています。
頑張ればまだまだ奥まで走れそうですが進入禁止の看板のある広場が一応駐車地となっているようです。
ここまで走れれば峠まではわずかです。
古道をたどって大峠へ:
大峠石仏
しばらくデコボコの車道を歩きますがすぐに山道となります。
この道はかつての会津中街道(松川街道)で所々昔の道と重なっていて一里塚や石畳の跡などを見ることができます。
さして急登もないまま大峠に登り着きます。十字路となっていてそのまま峠を越えれば会津中街道で三斗小屋宿へ、左に折れて登れば三本槍岳、そして右に登れば私たちの目指す流石山です。
この大峠はかつての戊辰戦争の戦場となったということで、その慰霊のためか峠にはひっそりと小さな石仏が立っています。
石仏の周囲はハクサンフウロやウツボグサが咲いていました。
たくさんの花に急登も忘れます:
峠から見上げる流石山はとんでもない急登で、気合いを入れざるを得ません。実際登ると見ての通りの急登ですが、たくさんの花を楽しんでいるうちに登ってしまって、あまりつらい登りには感じません。
特に目立つのはニッコウキスゲの多さです。すでに花は終わっていましたが実をつけた花柄が無数に草原に立っています。満開時はどんな見事な景観だったでしょう。
ニッコウキスゲはちょっと残念でしたが、その代わりにハクサンフウロ、シモツケソウ、ミヤマコウゾリナ、クルマユリなど次から次と咲き競っていました。
急登から解放され緩やかな登りになると左側が開けた尾根道になります。しかし残念ながら霧に包まれて展望は得られませんでした。さっと霧が晴れてくれればと願うもののそう思い通りには行かずしっとり濡れて歩くことになりました。とは言え、花は相変わらず続いていますので霧の中でも充分楽しい道です。
流石山の花(クリックで拡大)
クルマユリ
コバギボウシ
ミヤマコウゾリナ
ハクサンフウロ
花の縦走路:
五葉の泉
流石山はなだらかな尾根の一角でさして特徴もなく通過点のような頂上です。北側には灌木が繁って見通しは悪いようです。(霧で灌木の先がどうなのかわかりませんでしたが。)
ここから大倉山に向けて縦走開始です。尾根は多少登降もありますが、これまでの登りに比べたら楽なもので花を楽しみながらのんびり歩けます。
尾根に出るとこれまでとはまた違った花も楽しめます。湿性の草地にはキンコウカが群れ咲いていました。尾根に出ると必ず会うマルバダケブキは盛夏の亜高山の定番です。
草尾根から灌木が多くなると左手にキスゲ小沼、その先に五葉の泉と案内板がある小さな池に出会います。泉というには大きな池です。二重山稜でもないのに尾根になぜこんな池ができたのか不思議です。水中を覗くとモリアオガエルのオタマジャクシがたくさん泳いでいました。
この縦走尾根の灌木帯ではコメツツジ、ハクサンシャクナゲ、ホツツジ、ヤマグルマが目立ちます。それぞれあまり派手ではありませんが灌木帯を控えめに飾る特徴ある植物です。
最後の一登りで大倉山頂上。こちらは流石山より以上に灌木に囲まれています。
ここからやや下って登り返すと三倉山ですが、時間切れでここまで。
キンコウカ
マルバダケブキ
ウツボグサ
シモツケソウ
下山もけっこう時間がかかります:
多少登降もあって平均すると水平という縦走路ですから帰路もけっこう時間がかかります。相変わらず霧に濡れながら下山を急ぎました。大峠まで戻ると青空も見え、 流石山から先に戻った仲間の話では峠からは三本槍岳も時たま見えたと言うことで、どうやら稜線にだけ霧が張り付いていたようです。
大峠を見下ろす
山名等について:
かつて地形図では大倉山と三倉山は逆に記述されていました。これは栃木県(旧黒磯)側の呼び方に依ったものです。福島県(下郷)側と呼称の綱引きがあったらしいですが、山奥過ぎてあまり熱の入らなかった栃木側に比べ福島側の熱意は並々ならぬものがあったようで強引に山名標識を立てて現在認知されている呼称が定着したいきさつがあったらしく、地形図も一時それを追認する形で記述が変わりました。(最新版は呼称の綱引きに関わりたくないのか山名そのものが記述されていません。)
なお、地形図(山名表記のあるS54版)や一部のガイドブックでは1831m付近を大倉山としていますが山頂山名板は1885m峰にあります。
【便利帳】 トイレ:道の駅しもごう、観音沼森林公園 【謝謝】 参考ガイドブック 新分県登山ガイド・福島県の山 山と溪谷社 【寄り道】 観音沼の先に日暮の滝 前日までの大雨のためか豪快でした。
【収穫】(^_^; 22片 20g