中倉山 沢入山 なかくらやま 1530m(三角点1499.6m) そうりやま 1704mm
ぐるり足尾の山々を見渡す展望尾根を歩く
中倉尾根、その存在を知ったのは遙か昔です。中倉尾根に触れた書物(「足尾山塊の山」岡田敏夫氏著)が手元にあり、その発行が昭和63年で、この本を手に取った時すでにこの中倉尾根は著者の他の記録で知っていたのでかれこれ30年以上前ということになります。
ただ、あくまでその存在を知ったというだけで、その山群はもっぱらエキスパートの世界だと言うこともしっかり印象づけられました。
ところがこの先もうあと何座登れるかという年齢になって、登っておきたい山かつ現実に登れそうな山を意識するようになり、この中倉山もそんな山の一つとして夢と具体の狭間にちょろちょろ顔を出すようになりました。行けることなら行きたいものだ。
前々週、袈裟丸山群の端にひっそりと広がる二子平を訪れて足尾の山の魅力に少し興奮状態に陥ったまま次の計画を立てたことで、よし、中倉尾根へ、と考えたのも多少道理はあるというわけです。
ずっと温めてきた中倉尾根、思い描いていたとおりの素晴らしい風光と展望とに圧倒されました。時間と体力が足らずに全山縦走は叶わず中倉山から沢入山までの稜線歩きとしてしまいましたがそれでも充分足尾らしさを楽しむことができました。
中倉山頂上
沢入山より上州武尊山
【日程】 2017年5月28日 【山域】 足尾 【天候】 晴れ
【アクセス】 国道122号は足尾バイパスの田元交差点で右折して日光方面へ通じていますがその田元交差点を直進して122号から分かれて間藤、赤倉方向へ。赤倉を過ぎ前方に足尾堰堤が見えたら左下に銅(あかがね)親水公園駐車場。 【駐車地】
30台くらいは駐車可能。
満車の場合は手前にも駐車場があります。【コース】
駐車場 - 銅親水公園
- 仁田元林道 - 登山口 - 中倉山
- 沢入山 - 巻き道水平道
- 登路合流 - 仁田元林道
- 銅親水公園 - 駐車場
実行程約6時間 健脚向き
(水平道は多少ルートファインディングが必要です。)
【メモ】
えー、こんな簡単でいいの:
ミズナラの巨木が目立つ登路
銅親水公園駐車場はほぼ満車、駐車枠からちょっとはみ出してやっと停めることができました。みなさん、いったいどこに行くのでしょう。このときは思いもしませんでしたが、あとから中倉尾根の変貌と人気を知ることになります。
駐車場から立派な吊り橋を渡って親水公園を通り、その先で水道橋を(これは本当は通行禁止なのですが)不法に(^_^;渡り仁田元林道に下り立ちます。
左手頭上に出川源頭岩峰群が高々と稜線を連ねています。こちらから見ると緑が多くあの荒々しい岩峰の雰囲気は少ししか感じられません。
小一時間ほど林道を辿り上久保沢堰堤の先の登山口からいよいよ本格的な登りとなります。
いろいろネットの記事など巡ってみると入山点が難しかったり登りのルートで悩んだりとなかなか厄介な印象を植え付けられていましたが、入山点はテープマークなどもあって難なく見つけることができました。
登路もはっきりしていて、いえ、それどころか手を入れてしっかり登山道となっています。
多少滑りやすい箇所があるもののルートを探すなんてことはありません。ただただひたすら登るだけ。ルートのはっきりしない急斜面を這い突くばって登る覚悟で来たのになんとも拍子抜けの登路です。でもそれはがっかりかというとそんなことはなく、私たちには幸い中の幸いで結果的には時間短縮できてそのおかげで主稜線を途中までとは言え曲がりなりにも縦走できたというわけです。
草付き斜面かと見紛うほど矮性のミヤコザサが斜面を覆って中層はヤマツツジ、見上げれば淡い新緑、この季節の山行はなんともしあわせ気分です。
最初はリョウブが優勢な樹林ですが高度を上げるとミズナラが多くなり、さらに稜線が近づくとツツジの樹林へと変化していきます。アカヤシオはほぼ終わってすでにそこここを朱く染めてヤマツツジの季節になっているようです。
思い描いていたとおりの大展望:
松木沢の向こうにどっかと大平山
左手のたぶん沢入山あたりらしい稜線の展望からそろそろ頂上も近いかと思うと登山道が左右に分かれます。いずれ合流するだろうと私は右の道をとりましたが合流どころかだんだん離れてついには水平道になってしまいました。どうやら尾根を通らずに巻き道になっているようです。戻るのも億劫なので尾根道まで行って稜線を登り返すことに。
尾根道に達すると一気に展望が広がります。松木川を眼下にして相向かいに赤倉山、半月山、社山、大平山が並んでいます。どれも大きな山体で日光側から見た小振りの山容とはまるきり別の山のように見えます。どれもかつて足尾側から延々と登り疲労困憊してたことがありますが、こうして改めて全容を眺めるとつくづくその大きさを思い知ります。
道は稜線を越えぐるっと半周して北側から中倉山三角点に達します。そのままヤマツツジに彩られた尾根を辿り中倉山頂上までは一投足です。
稜線を歩く
念願の中倉山:
中倉山頂上にはケルンが積まれその上に山名板が立てられています。足尾の山々をぐるり見渡す位置にあるためさながら足尾の見張り番です。
尾根道が延びて沢入山、ヲロ山へと続いています。スタート時刻が遅かったせいもありまた脚力とスタミナに問題ありということもあってどこまで行けるか不安ですがとりあえず先へと進むことに。
中倉山からはほぼ矮性のミヤコザサの尾根が続きます。この穏やかな風景のすぐ下にジャンダルムをはじめとするあの松木沢の荒々しい岩壁が存在するとはとても思えず不思議な気がします。しかし稜線の北側斜面、つまり松木側はやはりその荒々しさの一端を見せていて所々で稜線まで岩の崩落帯が登り詰めています。眼下の松木沢を見下ろす視角から類推してもその急峻さがわかります。
中倉山を振り返る 左下方がジャンダルム方向
一本ブナ(あまなさん撮影)
尾根は気持ちのよい縦走路ではありますがを平坦というわけではありません。中倉山の次に1539m峰、さらに沢入山前衛の1640m圏峰を越えてやっと沢入山です。ルンルンの稜線漫歩を期待していたのでけっこうきつい登降に感じました。
しかしそんなことは帳消しにしてもなお余りある中倉尾根の魅力です。
途中は笹原が草原のようであったり、シロヤシオの咲く疎林であったり、あるいはすっくとブナの木の独り立つ鞍部であったり、さらにはそのどれもが足尾の盟主といっていいくらい存在感のある山々を見上げる展望地であったりと、もうずっと歓声の連続です。
袈裟丸山群
庚申山(手前はヲロ山)
沢入山:
沢入山
沢入山前衛峰へかなり消耗を強いられてさらにもうひと頑張りでアカヤシオ疎林に包まれた沢入山頂上に到着です。
もういっぱいいっぱいで当然ヲロ山へ行く気持ちは誰にもなし。
沢入山頂上はアカヤシオの樹林で花期は夢のようかも知れませんがわずかに季節を違えてしまってほぼ散りかけている状態なのでさらに足を延ばしてすぐ先の高みで休憩としました。立ち枯れた木々が株だけになって残っています。かつてはここも樹林だったということです。
ここも素晴らしい展望です。
なんといっても目を見張らざるを得ないのは大平山の大きさです。とにかくでかい、と言うほかありません。ちょうどこの中倉尾根と同じような笹の原と疎林の風光に浸ったことを思い出して仲間とその山行の感激を反芻しました。
また、日光白根山、上州武尊山も存在感満点です。ここの周囲はもう雪もないので白く輝くこの2座は印象的です。
目を西にやるとやはり印象的なのはこの山域の盟主・皇海山です。この方角から見ると鋭角の頂上部を見せていて群馬県や埼玉県から見たもっそりとした印象とはだいぶ異なります。
日光白根山
皇海山
帰路は水平道で:
水平道を行く
このままいつまでも居たい沢入山頂上ですがまだ下山に時間もかかりそうです。腰を上げてもなお風光が名残惜しい山頂です。
沢入山からの下りは往路をそのまま辿りましたが最初の鞍部から右下方に見えた鹿道とも山道跡ともつかない笹の中のひとすじを辿りました。
鹿道にしては道形がしっかりしています。想像するにかつての水平道を現在は鹿が利用して結果維持できているということでしょうか。あちこちでよく出くわすケースです。とくに足尾の山では足尾〜根利山(足尾から見て県境の向こう側)の往来が盛んでしたのでこういった水平道の痕跡があちこちにあってびっくりさせられます。庚申山南面(舟石峠〜六林班峠)はよく知られていますが袈裟丸山南面、大平山南面などにも延々と続く水平道があります。
道跡はたまに消えたりはしますがすぐまたはっきりした道形が現れて結局尾根を歩くことなく中倉山もやり過ごしてしまいました。
最後に道は樹林の中になりほどなく今朝の登路にぶつかりました。
あとは登った道を逆に下るだけ。朝滑りやすかった道は好天になってもまだ危なっかしいままでした。今日一日の行程の中で唯一危険と言えば危険な箇所です。(^_^;
結局何十年も温めてきて意を決して向かったにしてはちょっと拍子抜けのする状況になっていましたが、だからといって魅力が失せたなんてことはありません。思い描いていたとおり素晴らしい景観が待っていてくれました。
余談ですが、下山後地元の方に聞いたところ中倉山登山はここ2年ほどで大ブレーク状態だそうです。寂寥の稜線を想像していたのにたくさんのハイカーに会ったのもそれで合点がいきました。【便利帳】 トイレ:道の駅くろほねやまびこ、草木ダム、銅親水公園
コンビニ:国道122沿い 道の駅くろほねやまびこ隣【収穫】(^_^; 19片 50g