【メモ】 |
一気に直登のつもりが:
目指す奈良部山は駐車地から見上げる尾根のすぐ左手にあるはず。そう思って駐車地から左手に分かれる沢づたいの林道にルートを取りました。このまま林道歩きでかなりの高みに持っていってもらえればラクチンです。ところがそうは簡単にはいかず、その林道は砂防堰堤を作ったときの工事用道路らしく4つの堰堤が終わると道もなくなってしまいました。そこから沢づたいに踏み跡がありどうやら人も通っている様子。やがて沢は二股になります。あたり一面ニリンソウの大群落。花にはまだ少々早く、気の早いのが2,3輪というところです。
ちょっとあたりを探ったところ、直進する本流には踏み跡がなく、右に分かれる沢に踏み跡がはっきりしています。目指す奈良部山とは逆方向になりますが、本流はあまりに急で踏み跡がないととても登れそうにありません。
この踏み跡はどうやらワサビ田に通う道のようです。ワサビ田はここからさらにかなり上流まで点々と現れますが、よくぞここまで作業をしに来るものだと感心します。しかしそれも終わると踏み跡も消えます。枝尾根に取り付くか、沢を詰めるか迷うところですが、なかなか美しい沢なのでそのまま沢を辿ることにしました。
小滝の連続:
ワサビ田が終わると一気に激しい傾斜となります。次々と小滝が現れてその都度直登しようか巻こうか迷います。それぞれはたかだか数mほどですが単独行なので慎重にならざるを得ません。
それまでも2,3mの小滝はいくつか越えましたが、やがてこの沢の核心の7滝の連続が現れます。7滝の通過は 1.直登、2.左直登、3.左脇、4.左の踏み跡高巻き、5.2段を右巻き、6.左直登、7.左高巻き、としました。
最上部の滝の上には湧水があり、湧き出した水がいきなり小滝となっています。ちょっと珍しい光景です。
飛び出した尾根は丸岩岳からの下山路:
カラ沢となって頭上が尾根らしき雰囲気になってくると傾斜はいよいよ急となりなかなか足がはかどりません。ここまで来たら最後まで真っ直ぐ登ろうと思うものの一歩登っては一歩ずり落ちるありさまで、堪らず鹿道を拾って枝尾根に逃げ登りました。そこからわずかで尾根に飛び出しますが、そこは登山道があって地形図を見るとどうやら丸岩岳からの下山路のようです。左に登るとすぐに奈良部山分岐に出ました。真っ直ぐ登れば丸岩岳ですが、そちらは置いて奈良部山方面へ。
目障りな石鴨林道:
丸岩岳南面を下る道は踏み跡はしっかりしているものの所々笹が茂って一般コースとは言い難い状況です。平坦な場所では頼みの踏み跡も乱れがちです。しかし行く手ははっきりしていますので踏み跡をはずれても修正に行きつ戻りつということはありません。
下りきると予想していたとおり林道が右手に現れます。一体何のためにこんな稜線間近に。すでに崖崩れで通行は不可能になっています。工事に伴って上がってきた平地の植物や外来植物がはびこっています。
林道を過ぎると静かな尾根道:
奈良部山山頂
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尾根が狭くなると笹から解放されていかにも安蘇の山らしい雰囲気になってきます。きれいな雑木林と堅い岩稜が特徴です。一つ顕著なピークを越え、ロープのある急斜面を下ると次の一登りでいよいよ永いこと念願だった黒木のピーク。思い描いていたとおり、岩のピークにツガ、ヒノキ、アカマツなどの大木が繁り神聖な雰囲気さえします。驚いたことになんとここにはタブノキの大木があちこち繁っていました。この近辺では足利の両崖山に数本残存して内陸北限自生地の一つとして天然記念物となっていますが、ここはさらに北に位置し1000mの標高でもありますので特異な植生と言えるかもしれません。
さらに嬉しいことに、頂上北側斜面にはイワカガミがびっしりと群生していて、花の時季にはどんなに華やかかしれません。一度時季を会わせて再訪したいものです。
しかし、どうやらここは奈良部山のピークではないようです。さらに南隣にやや高い雑木のピークが見えます。
一旦下ってから一投足で奈良部山。木の間越しに熊鷹山、日光男体山が望めますが展望はそれだけで、あまり特徴のない雑木に囲まれた三角点峰です。しかし、野鳥のさえずりと鹿の鳴き声だけの静けさがなんとも嬉しい気分にさせてくれます。
帰路に林道を歩いてみる:
道はさらに南進していますが、駐車地に戻らなくてはならないので往路を戻ることに。
黒木のピークは捲き道をとってカットしましたが、捲き道から尾根に戻ったところでなんと登山者にばったり。まさかこんな所で人に会うなんて、とあっちもビックリ顔でした。かなりの健脚らしく道のない尾根を登ってきたとか。下山も奈良部山から東に落ちる尾根をたどってみるつもりだとの話でした。(この登山者に下山後林道でまた会いましたが、この尾根は道もなく難儀されたと言うことでした。)
ここからルートをどう取ろうか迷いましたが、林道がいったいどんなことになっているのか見てみようという気になって丸岩岳をぐるり林道歩きしてみることにしました。
林道の端末に出るとそこはすさまじいほどの破壊の爪痕がそのままで、たくさんのミズナラの大木がなぎ倒されたまま放置されていました。
林道は水平道のまま丸岩岳を半周する形で回り込みます。悔しいことにこの林道が好展望で南面では足利方面が見通せ、また西面では桐生川源流部の深い谷とそれをぐるり取り巻く安蘇山塊核心部が一望です。とはいえ自分の歩いている道が起因となった破壊の状況は目を覆うばかりで、削り取った斜面は崩壊し道はすでに放棄され
た状態であちこちで大岩が道を塞いでいます。谷に向かっては崩れた土砂が流れ落ちてガレとなって覆っている箇所がいくつか見られました。もちろん登山者など眼中にないため丸岩岳〜野峰の踏み跡は分断された状態となっていて、仕方なし崖を駆け下りた跡がついていました。これでは逆コースは崖を這い登らなくてはならず大変ですね。この林道の惨状については項を改めてUPしたいと思います。
石鴨林道http://www.kimurass.co.jp/isikamo.htm
登山道に戻って下山:
丸岩岳北鞍部の土砂堆積地から登山道に戻って丸岩岳方向にわずか進むと左に捲き道が分岐します。多少雪が被ってはいましたが良く踏まれた道で労せずに丸岩岳下山路に出ることができます。
あとはいつもの急な道を一気に駆け下りるだけ。小戸川に下り着く手前の斜面には小規模ながらカタクリの群落がありちょうど咲き始めの新鮮な花を見ることができました。
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