根本山1199m
新緑の根本沢からアカヤシオ乱れ咲きの尾根へ
アカヤシオという花は人の世の麗人そのままに気難しく気まぐれで、数輪しか花を見せてくれない年があるかと思うと機嫌の良い年は全山ピンクに染めることもあり、そんなわがままなところがまた魅力です。大きな周期が巡ってきたせいなのか、あるいは前年の好天のおかげか、2005年の根本山はアカヤシオが精一杯花を咲かせてくれました。桐生川源流の根本沢から根本山神社の鎖場にとりつくや、合い向かう根本山北西斜面を染めるピンクの色にうっとり立ちつくすばかりでした。もちろん自分のいる岩稜も花に囲まれています。根本山は頂稜部にだけ群落があるので花時季を違えるとまったく花に会えないことになるのですが、時季としてもぴったりで、こんな幸運は数年に一度あるかないかです。
私たちは新緑の根本沢を遡ったのですが、シオジの自然林、エイザンスミレやヒトツバエゾスミレ、たくさんのネコノメソウの仲間など自然が豊かに残された楽しい道でした。また昔から根本山に参拝するための道でもありますので距離を示す丁石や中腹の断崖上に鎮座する根本山神社奥の院など昔をしのんで歩くのも楽しいものです。おりしも、5月3日は根本山神社例祭にあたり、飛駒の講のみなさんが老いも若きも神主さんともども登ってきていました。こんな苦労して登る奥山の神社なのに今も信者を集めているのは驚きです。
【日程】 2005年5月3日 【山域】 安蘇 【天候】 晴れ 【地図】 1/25000沢入
【アクセス】 桐生川沿いの道を最奥まで。 【駐車地】 林道三境線が左に分岐する地点に通行止めの看板があり、その手前路肩が広く駐車に使えます。さらに進むと不死熊橋でゲートに阻まれますがその手前にも3,4台停車できます。
林道三境線分岐手前
不死熊橋手前
なお、参拝の皆さんはさらに奥まで通行するため許可を取ったようですがゲートのすぐ先で崩壊に阻まれていました。このゲートはいつも閉鎖されていますので、もし開いていたとしても帰りに閉じこめられることになりますので進まないようにしたほうが無難です。道路も極端に荒れています。【コース】 不死熊橋 - 根本沢 − 根本山神社奥の院 − 行者山 − 中尾根十字路 − 根本山 − 十二山根本山神社
− 十二山 − 熊鷹山 − 十二山林道 − 不死熊橋
実行程約6時間 一般向き
花の中の日光白根山
【メモ】 新緑の根本沢:
根本沢新緑
不死熊橋で講のみなさんと頂上での再会を約束して、私たちは沢コースのよく踏まれた道へとスタートしました。橋のたもとからいきなりロープ頼りですが、そこを登ればあとは優しい道です。(1カ所、右に高巻く地点を見のがしてうろうろしてしまいました。)
ちょうど芽吹いたばかりの淡い緑が沢全体を明るくしています。いろいろなスミレやニリンソウ、コチャルメルソウ、数種類のネコノメソウなどなどこの沢は自然豊かです。途中のシオジの自然林はそのすっと伸びた木々の姿がなかなかかっこよく、きれいな林床とともに気持ちの良い景観になっています。
ところが、立木にゴミを拾ってください、みたいな内容のラベルがずっとベタベタくくりつけてあり、おめぇがゴミだろう、と文句の一つも言いたくなってきれいな沢もすっかりぶちこわしでした。
この沢は半円形にぐるっと回り込んで根本山神社に達していますので方角をとらえればだいたいどのくらいまで来ているのか見当がつきます。東南向きに歩くようになるとほどなく涸れ沢となって、すぐに両側を岩に狭まれると梯子、鎖を頼りに一気に高度を上げることになります。あたりには常緑の広葉樹が茂って神域にいることがわかります。
根本山神社奥の院:
根本山神社奥の院は三方が断崖の痩せた尾根上に鎮座しています。どうやってこれを建造したか、昔の人の信心はすさまじいものがあります。這い登ったところに鐘つき堂、その先に奥の院、ともにわずかな足場で岩にしがみついているので参拝もおそるおそるになってしまいます。奥の院は雨をしのぐ小屋がけの中にあって、小さいながら彫刻の施された立派なものです。
根本山神社奥の院
周囲は常緑の樹木が断崖を覆って神域の雰囲気満点です。その所々にアカヤシオが群れ咲いてあたりをぱっと艶やかにしています。このあたりでは満開をほんのわずかに過ぎたらしく、谷から吹き上げる風に乗って花びらがスカイダイビング、なんとも楽しい風情です。
鎖の急登また急登:
根本沢ではいつになったら頂上に着くのかと思うほどゆったりと登ってきたのですが、ここからいっぺんに帳尻合わせをさせられます。鎖を頼りに急登、また急登。しかし、急登もなんの苦労にもなりません。なぜなら、見上げる頂稜部はアカヤシオの大群落。それもそうそう行き会えないような大当たりの咲き具合です。振り返ると眼下に根本沢と三境山へ続くきれいな自然林の尾根、意外な近さで日光の男体山や白根山など豪華な眺めが広がっていました。中景の横根山は手が届きそうな近さで横根牧場や方塞山の電波反射板もはっきり見えます。
花の道を歩く
登り着いたピークが行者山、一旦下って今度は根本山への登りとなります。行者山から根本山への登り返しのこのあたりはアカヤシオが咲き乱れて、まさに花の中を歩く気分に夢見心地。
道は南斜面の巻き道となり、わずかな距離ですが無粋な杉や落葉松の植林地を通過します。中尾根からの道との十字路で左に登るとまた雑木の中にアカヤシオが現れて、この辺が休憩によい地点です。花を眺めながらの贅沢な昼食にしました。
根本山山肌を染めるアカヤシオ
アカヤシオ乱舞(拡大)
根本山:
根本山頂上は展望もなく雑木の中のだらっとした高みで、安蘇山塊の最高峰にしてはちょっと印象の薄い感は否めませんが、頂上周囲もアカヤシオがきれいに咲いていました。このまま尾根通しに進むと北に回り込んで三境
山頂 山方面となってしまいます。頂上から右に折れてどんどん下ると先ほどの十字路から来た巻き道を併せます。昔の人たちは根本神社に参拝するために登るので頂上などはあまり意味がなかったようです。ですから、この根本山の巻き道ばかりでなく、根本山を目指して飛駒から延々と続く尾根通しの道にもピークを巻く水平道が必ずあります。野峰、奈良部山、丸岩岳、熊鷹山、十二山、どれも頂上を踏まずにほぼ水平に巻くことができます。
十二山根本山神社
祭礼でにぎやかな根本神社:
巻き道を併せるとほどなく十二山根本山神社(根本神社)。不死熊橋で別れた皆さんが新しい注連縄も整ってきれいになった神社の前あちこちに陣取ってにぎやかな昼食の最中でした。私たちも参拝してから、茹で栗などいただいてわずかな時間ですが一休み。かつてはかなり壮大な社殿があったということで、石灯籠や手水の水盤が奥山には不釣り合いなほどでかいことでなるほど頷けます。 石祠の前にえらく大きな斧がデンと置いてるのも不思議な光景です。
講の方たちは飛駒在住あるいは飛駒ゆかりの皆さんですが、なるほど鳥居も飛駒方向から上がって来るような向きに建っています。今でこそ根本山は桐生の山ということになっていますが、昔は飛駒から尾根伝いに登ってきたようです。飛駒の老越路峠、黒沢などあちこちに根本山の道しるべの石柱が残っていることからもそのことはわかります。今も桐生川上流部の県境は桐生川で、したがって根本山神社奥の院も中尾根も栃木県に属しています。かつては上流だけでなく、桐生川筋の集落は右岸が群馬、左岸が栃木でした。橋を渡るたびに群馬になったり栃木になったり。現在の桐生市菱さえ栃木県でした。さすがに住民無視のこの県境は改められましたが、なごりで桐生川左岸の県境は不自然に山の中腹を走ったりしています。
安蘇の核心部は安蘇らしい景観でした:
根本山が安蘇最高峰、そして根本神社を取り囲むように尾根が派生した先に十二山、氷室山、熊鷹山、丸岩岳、野峰などまさにこのあたりが安蘇山塊の核心部です。そしてなだらかな尾根と急峻な岩稜の取り合わせ、ミヤコザサが林床を覆った自然林、まさしく安蘇山塊の典型的な景観がここにあります。足利周辺の山をちょろちょろ歩いて遊んでいた少年の頃、ここは遙かな峰でしたが、こうして歩いている今も安蘇核心にいるというだけでささやかな興奮を覚えます。
ミヤコザサの中、熊鷹山への一条の道
林道沿いの十二沢
根本神社からほとんど水平のまま、まず氷室山への道を分け、十二山をやり過ごし(せっかくですから登り返して頂上を踏みましたが、とても小さな山名板があるだけの尾根の通過点のような山頂でした。)、南に向きを変えてから三滝への道を分け、最後のわずかな登りで熊鷹山の360°大展望を我がものにしました。春には珍しく空気が澄んで日光男体山、白根山、錫ヶ岳、皇海山、袈裟丸山などくっきりと遠望できました。もちろん安蘇山塊は桐生川域から足利の山、旗川域、永野川域、粕尾川域まで全山一望、さらに鹿沼、宇都宮の山も視界の中です。なんとも贅沢な眺めです。ここでも張り出した支尾根にアカヤシオ群落が見られます。
十二山林道(石鴨林道)を不死熊橋まで延々と歩く:
熊鷹山から丸岩岳方向へ下るとすぐ石祠があり、その先で小戸川へと下る道を分けます。さらに進むと右に十二沢方向へ下る道が分かれます。この道はほぼ一直線に下ってあっという間に林道に飛び出します。ここから延々と荒れた林道を1時間ほど下って不死熊橋に戻りました。この林道は自然破壊も極まれりというような乱暴な道で、何カ所も崩れ落ち、沢に向け土砂が流れ落ちて裸のガレになっています。ただ、十二沢沿いになるといろいろな花も現れてきれいな沢になり、林道歩きといっても楽しい道でした。
根本山の花図鑑(クリックで拡大)
ヒトツバエゾスミレ
コンロンソウ
ミツバツチグリ
ミヤマキケマン
シロバナエンレイソウ
コチャルメルソウ
コガネネコノメソウ
ツルネコノメソウ【便利帳】 トイレ:梅田ふるさとセンター。朝早く営業前でもトイレは使えます。 【収穫】(^_^; 1840g、94片+ポリプロピレンテープ20本
一升瓶拾っちまって、重いんだ、これが。(^_^;