【メモ】 |
皆沢を遡る:
皆沢の流れ
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皆沢(かいざわ・集落の名前でもあるし沢の名前でもあります。)は桐生・梅田と佐野(旧田沼)・飛駒の中程の山間にあり、落人伝説でもありそうな雰囲気で、藤姓足利の滅亡の物語にも赤雪山の伝説とともに語られている古くからの集落です。今でこそ快適な道路が整備されていますが、かつては山また山の山奥にいきなり集落が現れるといった趣でした。
この皆沢の集落から北に皆沢川(土木事務所では皆沢川の名称を使用しているようですが沢としての呼び方でも皆沢と呼ぶようです。)を野峰まで遡ることができます。もちろん源流部には道はなく、植林に使った作業道の痕跡をたどったりミヤコザサの斜面を強引に歩くことになります。
ゲート前の広場に車を停めて、皆沢川に沿って皆沢林道を歩くこと45分、やっと山道となりました。
この道は林道歩きといっても疲れるだけの意味のない林道歩きではなく、何種類ものスミレが道にまで咲き誇っていてけっこう楽しい道です。とりわけエイザンスミレ系統の花色の個体変化は興味深いものです。また、この栃木群馬県境一帯にはエイザンスミレの変種のヒトツバエゾスミレが分布していていて、「ヒトツバ」といいながら2裂、3裂、あるいはどこがエイザンスミレと違うのかと思えるほど深く避けているものなど様々な変化があって興味は尽きません。なお、このヒトツバエゾスミレの白花種が鳴神山の固有種ナルカミスミレです。ここのヒトツバエゾスミレにも花色が限りなく白に近い個体もあり、そのあたりの区別は微妙です。
林道から沢に降りて飛び石伝いに沢をたどってみると、ニリンソウ、ヒトリシズカ、ネコノメソウ、コチャルメルソウなど春の花がいっぱいでしたが、やがて数メートルの滝に阻まれ頭上の林道まで急なガレを登る羽目になりました。
林道の最後の1kmほどは沢をブルドーザで押し広げた乱暴きわまりないブルドーザ道となり、そのままいつのまにか沢歩きとなります。沢といってもこのあたりまで来ると足を濡らすこともなくて、そのうちにまったくの涸れ沢となってしまいます。
稜線一帯はなだらかな高原状の樹林帯:
源頭部はなだらかな起伏となって左手に杉植林地、右手には雑木の斜面になります。
私はかつて東南尾根の山腹道からアカヤシオのトンネルをくぐって山頂に達した記憶をたどるつもりで右に大きく迂回して尾根まで回り込みましたが、なんと山腹には古い作業道の名残が残っていました。ミヤコザサは鹿に食われたのかかなりまばらになっていますので、道形が消えればあとはどこを歩こうとお構いなし。しかし、東南尾根に出てもアカヤシオのアの字もなく、時期が早すぎたせいなのか、あるいは姿そのものも見あたらないところをみるとすでにアカヤシオは消えてしまったのか、少し残念な結果でした。そのため、今回の下山は東南尾根の岩稜をたどるつもりでいたのですが、次に譲って山頂から南西に緩やかな尾根を降ることにしました。
あまり展望もない山頂:
男体山と根本山
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岩稜の東南尾根も主尾根に近いあたりはゆったりとした野峰らしい地形となっていて、どこが稜線やらわかりません。山標識に沿って高みに登るとそこは南の前衛峰であとは気分の良い平坦な鞍部を挟んで野峰頂上まで一投足。
頂上は南を杉林、北を落葉樹にすっかり覆われて、昔の面影は全くなくなっていました。唯一北側に樹林の隙間があり、根本山と男体山が前後して重なって見えます。ちょっと枝が邪魔にはなりますが日光白根山も真っ白に輝いていました。右に丸岩岳、左に足尾の山々も木の枝越しに眺められます。あとは静寂が魅力といったところです。どこか眺めのきくところはないかと周囲を歩き回りましたが、見た限りどこも木々に遮られています。安蘇核心部をぐるり見通せる絶好の位置にありながらちょっと残念ですが、まあ、このことが静かな山でいられる理由と思うとそれもまた幸運なのかもしれません。。
下山は途中まで一般コース:
山桜咲く
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登路で登りついた前衛峰までもどり、そのまま明瞭な踏み跡をたどって下山にかかりましたが明瞭なのは初めのうちだけで、杉の落ち葉の積もった鞍部では道を失いがちです。ペンキのマークがありますからこれを頼るしかありません。やや尾根が痩せてくると右後方に足尾連山、右手に三境山、残馬山などが木の枝越しに眺められるようになり、また道もはっきりしてきてここからは安心して野外活動センターの登山口まで一気に下れそうです。車を皆沢側においてきたためどこか適当なところで尾根をはずれなければなりませんが、どうやら頂上から付いていた赤ペンキが突然杉の植林地へ下っていきますのでこれに従うことにしました。 ほとんど道形もないまま植林地の中を闇雲に駆け下るようなマークで、いったいこれはハイカーのためなのか伐採の作業用なのかといぶかる気持ちで下ること約30分、いきなり朝に通ったブルドーザ道に飛び出しました。
昼下がり、周囲の斜面は春爛漫、淡い緑の中に山桜が咲き乱れて最後のご褒美となりました。
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