女峰山2483m
見事なシラビソ、コメツガ樹林
昔、日光二荒山神社から登ろうとして途中で力尽きてしまった経験があり、そのためか縁の遠い山になってしまっていた女峰山。ところが最近林道を利用して志津からチョチョイと登れるようになっていると聞いて、これは出掛けなければ。
実際に登ってみるとチョチョイってわけにはいかず、やはり女峰山は女峰山だけのことはあり、林道歩きのたいへんさもあってけっこう登り応えのある山でした。
2500m級の山ですからそれなりに高山植物もありますが、なんと言っても印象的なのは全山覆い尽くすシラビソとコメツガの樹林。とりわけ今まで存在さえ知らなかった帝釈山北西から小真名子山北側に広がる広大な平坦地の樹海を帝釈山から見下ろす景観は見事です。
【日程】 2005年8月27日 【山域】 日光 【天候】 曇り一時晴れ 【地図】 1/25000日光北部
【アクセス】 国道120号から光徳入り口右折、1km弱走ると右に折れる分岐があるのでそこを右折、わずかでさらに裏男体林道に左折。男体山登り口の志津駐車場を通り過ぎて1.5kmほどで車止めゲート。
【駐車地】 ゲート前に3台ほど。手前にも何カ所か路肩に駐車可能ですが総数十数台が限度のようで、それ以上は工事車の邪魔になるかも知れません。いっそ志津に駐車して歩いてもいいかと思います。
ゲート手前300m路肩
ゲート前(青色ライン内に)
ただし、帰路の林道歩きがうんざりしますのでそれを考えると早めに到着して志津の先に止めたいところです。【コース】 志津越え先駐車地 - ゲート −馬立分岐 − 馬立 − 水場 − 唐沢小屋 - 女峰山 - 専女山 - 帝釈山
- 富士見峠 - 馬立分岐 - 駐車地
実行程約7時間
専女山より女峰山
帝釈山より小真名子山/左大真名子山、右太郎山
苔むすシラビソ・コメツガ樹林(帝釈山下り)
【メモ】 林道を奥深く分け入ってアプローチ短縮:
前週の男体山に続いての女峰山、これで表日光の代表2山を山歴に組み込むことになりました。いままで表日光の山にはあまり興味もなく、ただ一度、二荒山から女峰山への長大なコースで力尽きて撤退したことだけが唯一の表日光の経験です。それももう三十数年前の遠い彼方。(^_^;
前日吹き荒れた台風も去ったので台風一過の大展望を期待して裏男体林道に分け入りましたが、どうやら予想に反して曇りがちの空模様になってしまいました。満車の志津駐車場を過ぎるとぐっと道も狭まり対向車が心配なダートとなりますがそれも約1.5kmで車止めのゲートに阻まれます。ゲート前にはすでに2台の先客があり、無理すればまだ駐車可能でしたが大型工事車でも来れば迷惑になりそうなのでUターンして広い路肩に停めました。
しばらくは林道歩き。周囲は荒れた景観を想像していたのとは違って深い樹林です。ハンゴンソウなどが咲いているものの概して針葉樹林の単調な林相です。
深い樹林の登り:
工事用モノレールの基地のある地点が馬立分岐、ここで林道から離れ沢に下降し、沢を越えると馬立。ここから堰堤工事の現場を右手に見ながら沢沿いの樹林の中の一条の登山道をだらだらと登って行きます。ときどき樹間から大真名子、小真名子が望めます。傾斜が急になると工事の音も遠ざかり深い樹林の気持ちよい登路になります。一度ガレ沢を渡りますが、台風の翌日とあって水量も多く、靴を濡らして飛び石で渡ることになりました。このあたりからいよいよ傾斜も増して頑張りどころ。
緩やかな樹林の登り
途中の水場は冷たい水が豊富に流れて水の補給には恰好です。
やがて唐沢小屋の前に飛び出します。ここをベースに登るハイカーも多いようで、数パーティーが休んでいてなかなか賑やかでした。
登路は小屋の左手に一体の石仏がありますからこの脇を通ります。石仏は火焔を背負っていますのでお不動様でしょうか。小屋の先ではさらに樹林は深くなりますがそれもわずか、突然視界が開けてガレ場となります。落石がありそうで少し不安ですが、吹き上げる風が気持ちよく、安全な場所を確かめ今しがた登ってきた樹林帯を見下ろして一休みするには絶好です。くれぐれもガレ中央部では立ち止まらないようにしなければなりません。このガレの岩の成因は層状の岩盤が剥離したことによるらしく、板状の岩屑ですからしっかり安定して締まると言うことがないようです。浮き石が多く、特に後続の登山者がいるときには細心の注意が必要です。
雲に阻まれて大展望はお預け でも近景は楽しめました:
ガレを抜けて急登わずかで突然女峰山神社(? 祠に神社名が見あたらないで本当のところはわかりません。)の前に飛び出します。その裏手が頂上。北側斜面はミヤマハンノキですが南側は草付きの岩場となっていて空中にいるような爽快さです。
山頂神社
三角点は稜線上を赤薙方向に降った場所にあるそうで、三角点標高と最高点標高とは違うということになります。
雲の切れ目が南西方向に限られてしまったため展望は帝釈山方面への稜線と大真名子山、小真名子山、太郎山、さらにその先の戦場ヶ原や県境尾根の狭い範囲となってしまいました。それでも足下が一気に切れ落ちていますので展望台としては最高のポイントです。とりわけ帝釈山に続く鋭い稜線の眺めはここで引き返すなんてことを許さない魅力があります。当然あそこを歩かなくては。
1時間ほど雲が消えるのを待ったのに結局は空模様が変わる兆しもなく、やむなく帝釈山目指して腰を上げました。
思っていたとおり魅力的な稜線:
女峰山から一気に下降しますが、このあたりは高山植物がたくさんあって花期をはずしてしまったことが悔やまれます。それでも咲き残りのトウヤクリンドウ、ベンケイソウ(ホソバ?)、コゴメグサなどをカメラに収めました。
鋭い岩稜が続き、小ピークが次々現れます。稜線上にはアズマシャクナゲが目立ちますが、どれもびっしり花殻をつけていて今年の花時の艶やかさがどれほどだったかと残念です。ただしその反動か来年の準備はからきしダメなようで、蕾を準備している枝はほんのわずか、ちょっと来年の期待はできません。
針葉樹が稜線まで覆ってシラビソの鮮やかな紫色の実が目立ちます。
見返ると女峰山の高さ。ピラミダルな姿がなかなかかっこいい。
最初の顕著な高みには専女山という初耳の山名が掲げてありました。ここから見る女峰山はピラミダルな姿をぐっと持ち上げていて絵になります。
この稜線から北側の眺望はまだ見たことのない景観ですから何とか雲がとれないかと期待したのですが、南側の忙しい雲の動きとは違ってべったり張り付いたままで諦めるほかありません。
帝釈山から見下ろす広大な樹海:
楽しい稜線歩きも帝釈山まで。ここで小休止しながら最後の展望を楽しみました。
ここからの眺めにはいささか興奮してしまいました。小真名子山の北側に今まで存在すら知らなかった広大な平坦地が見下ろせるのです。深い樹林に覆われさしずめ樹海と呼んでいい景観です。自然林なのか植林地なのかはここからはわかりませんが、いずれにしてもじつに深い森です。
そして帝釈山の山頂を辞して下山を始めるや、この山がすでにその深い森の一部なのだと理解できます。苔がびっしり林床を覆った樹林は老樹、幼樹取り混ぜて更新を繰り返しながら維持されている様子が見て取れます。腐食し始めた倒木には早速新たな種子の芽生えが見られます。光徳周辺、戦場ヶ原周辺、小田代周辺の単調で貧しい植生の樹林帯とは明らかに異なります。つらい下山もこの森の景観に慰められます。
地獄の林道歩き:
降りついた富士見峠は小広い広場となって、右に野門方向、左に志津方向とを分ける林道の峠となっています。もっとも車の走れる状況ではなく特に右に向かう野門方面への道はほとんど草に覆われて歩いて通るのさえ不安です。本当に野門まで行けるのでしょうか。しかし、この道は先ほど見下ろした樹海の真っ只中を突っ切るはずで、一度歩いてみたい気もします。
ここからまっすぐ登り返すと小真名子山です。先ほどの下山路で見たその登路は恐ろしく急なガレを登るようです。私たちにはこの急登に取り付く気にさせるような時間も体力もとうていなく、私たちはもちろん左に下る林道をとりました。この道は大振りの玉石がごろごろしていてすこぶる歩きにくく、誰に向かって言うということではないのですが、文句を言い言い戻りました。林道のおかげでラクチン登山ができているのですからとても文句の言える筋合いではないのですが、ここ富士見峠から駐車地までまさに地獄の林道歩きでした。
なお、途中、左に降って行く林道分岐があります。直進の方はわずかに登りになっているので分岐方向に行くのかと迷いましたが、こちらは堰堤工事現場になり、直進が正解です。また時たま林道のショートカットを促すかのようなテープマークがありますが、ちょっと踏み込んでみたもののどうも笹に覆われていて怪しいので忠実に林道をたどるのが無難です。
女峰山の花(クリックで拡大)
クロクモソウ
ハナイカリ【収穫】(^_^; 127片 740g
なぜかシジミの貝殻が。山頂でみそ汁でも作ったのでしょうか(^_^;