【メモ】 |
峠道
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峠からの展望:
峠に立って足利方面を振り返るといかにも峠道という雰囲気で、展望もなかなかです。名草あるいは松田からつづら折りで登って来る峠道はこの峠を越えて老越路峠へと続いています。
ちょうど桜も満開で吹き上げる風がなんとも心地よく、ここの眺めを楽しみに車でやってくる人もけっこういるようです。足利西部の山々が一望で、さらにその先には関東平野が望めます。
峠からは赤雪山に向けてしっかりした登山道が整備されていています。まずは階段の急な登りから始まりますがそれもつかの間、すぐになだらかな尾根路になります。芽吹き直後の落葉樹林はヤマザクラが満開で、この時期はこのあたりの山々が一番輝く季節です。木の間越しに多高山、丸岩岳、野峰などが見通せますが、これから木々の葉が伸びきると展望も遮られてしまいますから最後の展望かも知れません。
152号鉄塔:
なだらかな尾根はすぐに下りにかかります。
目の前に大きな送電鉄塔が現れますが、これは新栃木線といって群馬の新新田変電所(旧新田町・太田市)と栃木の新栃木変電所(旧河内町・宇都宮)を結ぶ500KV送電線です。この先、北へ向けて多高山西をかすめ、のこぎり山北尾根、高原山、羽賀場山南尾根、かまどくら、次石山北尾根を経由して新栃木変電所へと向かいます。南へは深高山から渡良瀬川へ下り群馬の平野を走り新新田変電所へつながります。ややこしいのは新栃木線のすぐ北に南いわき幹線という1000KV送電線(実際は500KV運用)があって、粟野あたりから平行しているので山を歩くときの目安として間違いやすく、たとえば鳴蟲山の頂上鉄塔は南いわき幹線で南尾根の鉄塔は新栃木線です。南いわき幹線は赤城山の北からスタートして田沢奥山、袈裟丸山南、大萱山、尾出山北、鳴蟲山を経て今市開閉所へと続く送電線はこちらの南いわき幹線です。
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シカの足跡のみの巡視道:
ミツバツツジ
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152号鉄塔から少し戻って左に分かれる道が次の鉄塔への巡視路です。案内標識に「ハイキングコースではありません」と示されていますが手入れの行き届いたしっかりした道が続いています。人が歩くのはまれですからふかふかでシカの足跡だけがはっきり残っています。初めはトラバース道で、左手が緩やかな疎林の谷になって、まだ下草も茂ってはいない平坦地は何とも心地よい風景です。
トラバース道からやがて尾根道になり、ヤマザクラ、ミツバツツジ、フモトスミレなど春の花を楽しみながらのんびり歩くことができます。
やがて小さなコブに達すると左へ巡視道が分かれていて153号鉄塔へと導かれます。ミツバツツジに囲まれた静かな切り開きにどーんと大鉄塔が建っています。たぶん鉄塔建設時に植栽されたのか周囲にはこのあたりではあまり見かけないヤシャブシが茂っています。
巡視路はここで行き止まりなので一旦分岐のコブまで戻りさらに尾根通しの巡視路を進みます。512m峰を通過し次のコブの前で道なりに左にトラバース気味に下り尾根と別れるとほどなく154号鉄塔です。ここからは152号鉄塔、153号鉄塔を見返すことができますが、それらからはかなり下った位置となります。
巡視路はそのまま一気に下ります。緩やかな谷状の地形でカタクリ、キツネノカミソリの小群落がありました。そのまま植林地へ入り巡視路ははっきりしなくなりますが、目をこらすと電光を切った道形がそれとわかります。もし道を失っても沢筋に向けて下ればやがて道形もはっきりします。
下方に林道が見えたら沢を越えて大日陰林道に下り立ちます。 |
うんざり、林道歩き:
ヤマザクラ
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降り立ったところはスタート点からは尾根の反対側で、戻るにはぐるり大回りしなければなりません。
まずは県道まで大日陰林道を下ります。県道までは周囲が植林地なので特に見るべきものもありませんが、県道に出ると見上げる斜面にヤマザクラが咲き競い、カタクリ、ニリンソウなどが無造作に咲いてまさに春爛漫です。道脇の沢にはイワナの影も見られるうれしい道です。時々車やバイクに出会いますが、おおむね静かな峠道で、西に行けば皆沢の集落、東に行けば老越路峠を経て飛駒に通じています。
老越路峠は多高山の登山口でもあり、小さな案内板の脇から踏み跡が頂上目指して登っていきます。
峠手前から戻るように右の長石林道に入り、さらにひたすら車道歩きの末、やっとこさ峠の駐車地にたどり着きました。
しかし、この林道でもただただ歩くだけというわけではなくここでも春の花を満喫できます。ヤマザクラ、ヤマブキなどに混じってなんとアカヤシオも見かけることができました。また林道脇にはたくさんのスミレが咲いていました。タチツボスミレ、エイザンスミレなどがめだちます。エイザンスミレは個々の変化が顕著で亜種なのか個体変化なのか素人にはよく判別できませんが、真っ白なのはシロバナエゾスミレかもしれないし、葉が単葉なのはヒトツバエゾスミレ(栃木群馬県境付近に分布)なのかも知れません。真っ白の花で単葉もけっこう見かけましたがこれはたぶん個体変化と思われます。
駐車地に戻ったときにはすでに夕刻で、峠からはスタートした時刻とはまた違った景色を眺めることになりました。
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