2010-5-5
三境山:
かれこれ40年ほど前、石鴨から沢を詰めて三境山のすぐ北の尾根に至り、三境山を踏んでから今度は別の沢を下って周回したことがあり、それ以来の三境山です。その頃はまだ、今は消えてしまった上藤生集落が無人ながら残っていてかつてはかなり沢奥まで人が住んでいたことが解りました。(昭和42年版の1/5000地形図には集落が記されています。それからおそらく2,3年後だと記憶していますがすでに無人集落でした。)
現在は石鴨から草木湖まで林道三境線が通じていますので三境山までは峠越えのトンネル脇から45分ほどで登り着いてしまいます。
落葉樹の源頭
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トンネルの草木側出口の先に駐車地がありそこが登山口です。すぐに水場がありそのまま小沢に沿って登りやがてヒノキ植林地となるとほどなく稜線です。登山口から約15分ほどです。登り着いた鞍部には崩れかかった石祠が2つあります。
ここから南にたどれば残馬山、座間峠、鳴神山へと続きます。三境山、たぬき山へはここから北へ向かいます。鞍部はヒノキ植林地となっていますがやがて左側(草木側)が美しい林相の落葉樹林となります。所々にアカヤシオが咲いていました。
振り返ると残馬山の北隣のピークあたりにはかなりのアカヤシオが見えました。
大岩を縫う様な急登の先が三境山頂上です。
三角点と石祠があるだけの静かな頂上です。かつては灌木の展望峰でしたが現在は樹木に囲まれて展望はありません。樹間からはこれから目指すたぬき山が見えます。
巨木の落葉樹林:
三境山から先は気分の良い落葉樹林を楽しみながらの稜線歩きとなります。尾根の右の梅田側はずっとヒノキ植林地でこれといって見所はありませんが、それとは対照的に左の草木側斜面は美しい落葉樹林です。落ち葉が深く積もった明るい沢の源頭には鹿のヌタ場などもありこのあたりの野生の度合いを感じることができます。
展望はありませんがむしろこの尾根の魅力は林相の美しさです。かなりの樹齢と思われる巨木が目立ちます。
落葉樹の尾根
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坦々と小さな登降を繰り返して北上しますがずっと右にヒノキ植林地、左に落葉樹林が続きます。
やがて分岐を示す案内板を見出し根本山へと続く主稜線から離れます。この分岐付近はアカヤシオが満開でした。
この分岐は間違えることもないでしょうがその先の尾根から斜面を下る分岐が少々迷いやすい地形になっています。地形図を見るといかにも迷いそうに見て取れますが実際にも分岐が尾根通しではなく尾根の途中から斜面を下らなくてはなりません。私は警戒しすぎて少し手前で斜面を下ってしまいどうも尾根が違うことに気付いて登り返すハメになりました。帰路に確認したらしっかりテープマークがあってここまで尾根を進めばなんのことはないのでしたが地形図を読みながら歩くハイカーには要警戒の分岐です。
丸坊主の加藤畑沢:
尾根に戻って見ると加藤畑沢一帯に冗談のような景観が広がっていました。ここまで綺麗さっぱりやっちゃうかと思うような大規模伐採でまるっきり丸坊主。ずっと美しい落葉樹の尾根を歩いてきた目には異様に映りますが、皮肉にも足尾、日光方面の大展望が広がってコース唯一の展望地となっていました。
近景には椀名条山、地蔵岳(粕尾峠)、横根山、大萱山などがうねり、その先には中禅寺湖南岸尾根、日光白根山、皇海山、袈裟丸山などが展望できます。あいにくの薄靄で爽快な展望ではありませんでしたがそれでもちょっと得難い位置からの展望は新鮮でした。
さらに美しい樹林がたぬき山まで続く:
アカヤシオ |
伐採地を過ぎると再び美しい樹林となります。主稜線に比べてアップダウンが激しくなりますが、アカヤシオになぐさめられながら一つ一つ小ピークを越えていくのもまた楽しいものです。
やがてこの尾根の最高標高1150mほどのピークに達します。特に何があるわけでもない通過点のような頂上です。踏み跡が南に分岐していますがどこまで続いているかは判りません。
この頂上は熊糞山と呼ばれているらしいのですが昔はあまり聞かない山名でした。(私が知らなかっただけかもしれませんが。)
さらに少し下ってから登り返すと静かなたぬき山頂上です。頂上は小広くぽっかりと開けて、はるばる来たなと思わせる静寂に包まれています。単独山行に相応しくなぁんにもないのが好ましい頂上です。
昼食を摂りながらしばらく静寂を楽しんでからまた三境山に向けて往路を戻りました。
結局ゴールデンウィークというのに全コース誰とも会わない静寂の尾根でした。
林道を下って根本山登山口手前の駐車地まで戻ってみたらたくさんのハイカーが帰り支度をしていました。根本山と三境山は僅か離れているだけというのにこの賑わいの差はどうでしょう。人気の山にハイカーがどっと集中してくれるおかげで静かな山が残ってくれているのは考えようによってはありがたいことです。
山名について:
私たちには「たぬき山」が馴染み深いですが最近は「白浜山」の呼び名の方が通じやすいようです。
ヤマブキ
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この山名をガイド記事で最初に目にしたのは1992年刊遊歩百山の岡田昭夫氏の記事で、氏は東村(当時)役場、森林組合に問い合わせた結果当時は一般的な呼び名はなく地元で「たぬき山」あるいは「天狗山」と呼ぶようだと示した上で、三角点名が白浜山であることと草木湖に水没した集落「白浜」が忘れ去られることのないよう「白浜山」を採ったと記述しています。
ちなみに現在は地元でも「白浜山」が一般的なようです。
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