【メモ】 |
出合い:
紅葉 120号沿い
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前年秋、子持山から山岳同定を楽しんでいたところ日光白根山と燧ヶ岳の中間に鋭く頭をもたげている山に気付きました。日光白根山と燧ヶ岳の間は遠望すると(見た目は)平坦な尾根続きでこれといった目立つピークもあまりないのでこの山の存在はけっこう目立ちます。なんだあの山は。燕巣山との出合いです。
古いガイドブックを広げると燕巣山の両脇を越える四郎峠と湯沢峠はかつてはけっこう歩かれていたことがわかります。今はほとんど忘れられているこの峠道も昔は大清水へ向け、あるいは奥鬼怒へ向け多くのハイカーたちが越えていたようです。かつて先人ハイカーたちはピークを踏まずとも峠越えというコースを好んでたどっていたのです。この日光付近でいえば中禅寺湖南岸から足尾までたどる半月峠越えや阿世潟峠越えはとてもポピュラーなコースでした。
今は廃道同然になってしまった四郎峠越えの道ですが燕巣山へ登るための峠までに限れば良く踏まれているという情報を得て紅葉の時期を狙って出掛けました。
入山点でいきなりウロウロ:
駐車場の奥から湯沢峠に向けて広い道が向かっていてそれを示す道標もありますが、目指す四郎峠へは案内板もなく駐車場からどう出ればよいかわかりません。うろうろ探しましたがとうとうそれらしいものも見つからず四郎峠方向に向かっている沢沿いの広い道を進むことにしました。
駐車場奥の脇が沢の二股になっています。どうやら左が四郎沢、右が湯沢のようです。沢を越えた先の四郎沢沿いに道が見えますが橋もなく沢に降りて渡るしかありません。
四郎沢のナメ
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そのうちにテープが現れて、どうやらこの道で良さそうです。
堰堤が次々に現れますが、しばらくは沢沿いをたどります。4つ目(実際は下流にあと2つほどの堰堤がありますが、これは沢中なので越えることはありません。)の堰堤を越えた先で一旦沢から離れますが、ここで沢を直進してちょっとウロウロしてしまいました。正しい道は沢を渡って右(左岸)に登ります。
きれいなナメ:
四郎沢は水量も少なく倒木が多くて荒れた印象ですが、唯一楽しいポイントは2〜300mほど続くナメです。靴底を濡らす程度ですし滑りにくい岩質ですから注意しながら沢を歩くこともできます。もちろん脇に登山道がありますからそちらを歩く方が効率もいいし安全です。
ナメの途中から左の小尾根にとりつきます。ロープが固定されていますのでこれが目印です。この小尾根は左右を沢に挟まれ、その両脇に見下ろす沢がナメで、さらに深いシラビソの林になっていてちょっと立ち止まりたいような景観です。
この取り付きの先もナメが続いていますが小滝などもあるのでコースが小尾根に逃れているようです。でも取り付きを見落として沢を直進しても小尾根に登り返す踏み跡が2箇所ほどあります。沢の経験者にはこちらを歩く人もいるようです。
四郎峠:
四郎峠 左側が大清水方面
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ネマガリダケが現れてくると峠も近づいた証拠です。やや笹が薄くなるとひょっこり痩せ尾根上の四郎峠に飛び出します。峠というよりやせ尾根の乗っ越しという感じです。かつて峠を越えて大清水に向かった道はその跡すら判然としませんがうっすらとそれらしい雰囲気だけはあります。
尾根上の道は刈り払いもしっかりされていてこれまでの沢沿いの道とは一転して歩きやすい道になっています。東京電力の巡視道ということです。東電の境界標石が頻繁にあります。送電線などもないので水源涵養林の巡視なのでしょうか。。
峠から左へは四郎岳へ向かって、そして右へは目指す燕巣山へと歩きやすそうな道が続いていいます。
急登の尾根道:
峠からはわずかの急登で一旦小さな高みに達し、しばらくなだらかな道となります。見上げれば燕巣山が頭上にのしかかるような急峻さでそびえています。黒木(針葉樹)が多いので紅葉はその中に点々と見られる程度ですが、それはそれでまた風情があります。ただ、秋口に気温が下がらなかったためか紅葉の最盛期はまだのようです。
尾根道からはときどき樹間に日光白根山、錫ヶ岳、丸沼などが眺められます。
なだらかな尾根も長くは続かず遠望したとおりの急登が待っています。それも直線登りなのでペースを調整しないと息が上がって休み半分という有り様。
登路から至仏山、アヤメ平 至仏山に隠れるように巻機山
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しかし苦しい急登ではありますが、周囲はシラビソ、コメツガ、アスナロの樹林でときどき立ち止まってはそれらを眺めれば深い山に分け入ったという感覚が色濃くします。この針葉樹の森はこの山の一番の魅力と言っていいかも知れません。
ところどころ木々の切れ間から背後の展望が得られます。対峙する四郎岳が自分の標高を測る良い目安になります。そしてその先には笠ヶ岳、至仏岳、アヤメ平などを眺めることができます。
静かな燕巣山頂上:
肩でゆるやかになってもう一度急な登路を登り切ると待望の頂上、南側が開けて日光白根山の全貌が目に飛び込んできます。やはり日光白根山は見上げる様な高さです。
頂上からの展望はこの方向に限られてしまいますが、そのまま進むと北西方向に県境尾根を見通すことができます。鬼怒沼がすぐ近くなのに驚かされます。また右手には根名草山と温泉ヶ岳が大きく立ちはだかり、その隙間に太郎山(小太郎)もわずかに顔を覗かせています。鬼怒沼の後方はるかに県境尾根の山々(どれがどれだか(^_^;
)がうねうねと続きさらにその先には西吾妻山、磐梯山、東吾妻山、安達太良山、そして驚いたことに飯豊連峰がくっきりと。会津の山々のなんと雄大なこと。ただし調子に乗って県境尾根を下り
鬼怒沼 奥に特徴的な田代山 うっすらと吾妻連峰
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すぎるとネマガリダケのブッシュに難儀することになりますから展望を得られるところで引き返すに限ります。
ガイドブックなどでは展望はせいぜいこのくらいとしか記述がありませんが、樹林の中をごそごそ歩き回ってわずかな樹間を探すとさらに展望の楽しみが広がります。なんといっても尾瀬の隣ということを再認識するのは燧ヶ岳の姿です。ここからはナデッ窪を真正面から見るため双耳峰の姿が一番優美に見えるのではないでしょうか。木々の1本1本まで見える近さです。そして三平峠の隙間からなんと尾瀬沼の湖面まで見ることが出来ます。
またアヤメ平、景鶴山、至仏岳も近く大きく横たわっています。この山が意外や展望峰であることに気付きました。
猛烈なネマガリダケの藪:
湯沢峠まで藪を突いて歩く人もいる様なので(もちろん私には無理のようですから歩くつもりはないのですが)どんな様子かと思ってちょっとたどってみました。頂上先から右に踏み跡が認められます。この分岐に案内板等はありませんが、少し先に湯沢峠を指し示す板きれがありました。これで良しと思ったのもつかの間、その地点の先で踏み跡が完全に消えてネマガリダケの海を泳ぐことになりました。踏み跡を失ったというより踏み跡が消えたのだと確信していますが、あるいは別の踏み跡があったのかなという疑念も晴れません。それはともかく、これはやはり突破はとても無理と判断して数十メートル進んだだけで引き返すことにしました。
ネマガリダケの藪ですから下りはなんとか進めたものの登りでは逆目になってさらに悪戦苦闘が待っていました。結局湯沢峠までの全コースからすると1/100も歩かなかったのにヘトヘトになってしまいました。(^_^;
帰りは往路を戻りました。ついでに四郎岳も往復という選択もあったのですが、時間切れでやむなく四郎峠から下山しました。。
頂上より燧ヶ岳 わずかに尾瀬沼湖面 左奥は荒沢岳
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