次石山 つげいしやま 472.9m
鋭い岩塔の林立する珠玉の尾根
日光市今市・文挟(ふばさみ)と鹿沼市・板荷(いたが)の間に横たわる次石山は一見凡庸な里山に見えますが登ってびっくり、岩峰、岩塔が林立し、それらを乗り越えたり右へ左へ縫ったりして登る稜線が待っていました。
岩塔を重ねた稜線ははてどうしたものかと尻込みするようなスリリングなルートが続きます。その上、岩場を無事超えても主脈の尾根が複雑でルートファインディングに考え込むようなこともしばしばです。
しかし、うまい具合に踏み跡が岩を縫って続いているので注意深くたどればじつに楽しいコースです。それもそのはず、地元では毎年その岩塔の一つに梵天の山あげをしてその年の雷除けを祈願するのだそうです。その岩塔ばかりではなくピークピークにはそれぞれ古い石祠があり今も信仰の対象となっているようです。
それら岩峰からの展望も申し分なく、さらに岩場にはヒカゲツツジが多く、またイワウチワの大群落もあってまさに珠玉の尾根です。
こんな小粒ながらハードな山がそこここにあるのが鹿沼の山の特徴です。
一般ハイキングコースではありません。
関連ページ
小倉城山
http://www.kimurass.co.jp/ogurajouyama.htm
【日程】 2009年2月11日
2014年4月6日こちら【山域】 鹿沼 【天候】 2009-2-11 晴
2014-4-6 曇【地形図】 1/2500文挟
【アクセス】 例幣使街道から、あるいは小来川線から行川の平野橋を目指します。
平野橋を渡ると前方に見える山が次石山です。【駐車地】 2009-2-11
駐車に適当な場所はありませんので路肩の広いところを選んで駐車するしかありません。2014-4-6
墓地前に駐車可能【コース】 駐車地 − 林道奥 − 岩塔群 − 次石山 − 雷電山 − 派生独立ピーク − 送電線巡視路 − 261鉄塔
− 林道 − 駐車地
約5時間 ベテラン向き
麓から見る次石山
梵天の立つ岩塔と次石山頂上
女峰山
【メモ】 2009-2-11
最初の岩場上から古賀志山
入山点でうろうろ:
先人によるネットで存在だけは知ったもののそもそも入山点さえ判らず、結局林道を詰めて終点から藪を突いて支尾根に這い上がる羽目になりました。
平野橋から山に向かって進み道路が左にカーブする地点から直進する林道をそのまま谷間へたどり、さらに左右へ分かれる分岐を右へとると林道は行き止まりとなります。あたりはイノシシが掘り返した跡がすさまじくあまり気持ちのよいものではありません。林道の先がそのまま山道になるかと思っていたのですがイバラがひどくてやむなく少し戻ってから藪の薄いところを探して強引に支尾根まで一気に這い登りました。
支尾根にはうっすら踏み跡がありビニルテープのマーカーもありますが、どうやらテープの主も私と同様、いきなり道を違えたようです。というのも最初の大岩を巻いて高みに登り着く直前に右手から登ってくるしっかりした山道があったのです。
下山後地元の方にお聞きしたところ私のたどった林道とは支尾根を挟んだ反対側の墓地の脇から山道が続いているということでした。
この大岩を直登しようと思ったもののどうも無理のようでやむなく左から巻いて大岩の上に回り込みました。この高みから振り返ると真正面に古賀志山、多気山、宇都宮市街などを眺めることが出来ます。
岩稜の支尾根:
この最初の大岩からはこの山群の魅力が凝縮された楽しくスリリングな大岩、岩塔群が続きます。それぞれの高みからは日光、高原山、塩原奥の県境尾根、那須などが白く輝いてなかなかの展望を楽しめます。
またヒカゲツツジが多く、花時期にも訪れてみたいものです。
なおも岩を縫って高度を上げ、支尾根の頂上といっていいような石祠のある高みに登り着きます。展望はさらに広がって鹿沼、安蘇の山々も一望です。その高みのわずか先に進むと断崖上に飛び出しあっと驚くような景観にし
岩塔を振り返る
岩塔基部の鎖場ばし立ちつくしてしまいました。麓から見上げただけでは想像も出来なかったような圧倒的な景観です。切り立った足下から断崖を隔てて合い向かいに岩の塔がにょっきり突っ立って天を突く奇観が展開しています。さらにその先にも大岩がせり上がって行く手を遮るかのようです。
次石山頂上
しかし、岩の間にはうまい具合に通れるように道形があって(とはいえ、岩角や木の根を頼りに下らなければなりません。)その岩塔間近までまでたどることが出来ます。さらに鎖がしつらえてありそのままこの支尾根を通過することができますが、見たところ鎖の固定部がどうも安心できなくて一旦高みまで戻り左(南)から岩塔を巻きました。この岩の基部にはかすかに道跡はあるもののやはり危なっかしくて難儀しました。回り込んでから鎖まで登り返したところむしろ鎖を下った方が却って安全なようでした。
岩塔からさらに岩尾根を登って大岩の上から振り返ると先ほどの高みはじつはこちら側は断崖で大きな岩塔だったのです。まさに壮観と言うほかありません。
穏やかな主尾根:
緊張の岩塔群支尾根から一登りで三角点と石祠のある次石山頂上です。わずかに小広場となっていてこれまでの激しい尾根道とは対照的な静かな頂です。山稜の三叉路にあたり、南と北へ尾根道が続いています。どちらへ行こうか迷いましたが縦走路が長いだろうと思って右の北進する尾根へ向かいました。(左の尾根も隣の疎林のピークがちょっと気になります。)
雷電山頂上
檜植林地、雑木林が交互に現れ、さして見所もないまま尾根が続き、そのせいか緊張感が希薄になって420m峰で左に尾根が折れるのを見落として尾根を直進してしまいました。気づいたときには林道跡が見えるまで下ってしまい、また尾根まで藪を登り返すことになりました。
途中、雷電山と書かれた山名板(個人のもの)のあるピークがあり位置をはかるよいポイントとなっています。石祠がありここにも梵天がありました。羽黒山、篠井榛名山などをはじめこの地方の山々は盛んに梵天上げの神事が執り行われます。
ここで昼食をとってからさらに縦走を続けようと先を急いだのですが、雷電山から見て右の先に尾根からはずれた派生ピークがありそっちは縦走路じゃないと充分気をつけていたにもかかわらず引き込まれてしまいました。地形図では鞍部から尾根が分かれるような地形になっていることは承知していたのですが、実際にはなかなか難しいものです。
かなり大下りしてからどうも違うことに気づいたのですが、すぐ下に送電線巡視路が見えたのでたちまち気合いが失せてしまいそれをたどることにしました。
しかし道を間違えたおかげでイワウチワの大群落に出会うことが出来ました。斜面一帯かなりの密度で続いています。まだ花には早すぎますが花時期にもう一度訪ねたいものです。
送電線巡視路を登り返せば南いわき幹線262号鉄塔(赤鉄塔)で尾根に戻ることが出来そうですがもやは2度のルートミスで戦意喪失して261号鉄塔(灰鉄塔)の方向へ足が向いてしまいました。巡視路は261号から左に折れてしばらくなだらかに下ると林道に飛び出します。林道を右に下って里道になるとすぐに石仏群のある地点で山裾の舗装道に出ます。駐車地までは行川沿いに15分ほどで戻れます。
次石山のこと:
石仏のあるのどかな山麓(下山地)
下山後地元の方に次石山のことをいろいろお聞きしました。二人の方にお聞きしましたがお二人は話の内容が一致していました。
まずは山名の読み方ですが、「つげいしやま」と呼ぶようです。件の岩塔に梵天上げをしているといういわば当事者の方がおっしゃっていました。
その梵天上げは、昔この一帯で雹害があって作物が全滅したことがありそれ以来この神事が続いているとのことです。それ以来というのがいつ以来なのかは聞きそこなってしまいましたが。
その神事は毎年田植え時期に執り行われるそうです。雷様(らいさま)除けを祈願するのだそうです。
入山点のこともお聞きしました。私はいきなり藪に突っ込むことになりましたがその支尾根の反対側の墓地の脇から道が上がっているということです。その道というのは最初の岩上で道が上がってきたことを記した通りです。
2014-4-6
イワウチワの開花を狙って再訪:
林道や沢筋を埋める倒木
イワウチワの開花時期に再訪です。今回は取り付きでヤブに掴まるのを避けるために前回の取り付きとは反対側の墓地付近から林道に入りました。
林道はかなり奥まで入り込んでいるのでこのコースが本来の登山道に繋がっているはずですが今年の冬の大雪のため杉植林地がほとんど壊滅的な被害を受けてそのあおりで林道や沢筋はすっかり倒木に塞がれていました。最初は倒木をくぐったり乗り越えたりして進みましたがそれも不可能になって仕方なしに急斜面を尾根へ這い上がることにしました。
尾根に出れば比較的歩きやすくなりますが、梵天のある岩塔群は雨上がりで岩が滑るのでまた前回同様左に巻いて通過しました。
アカヤシオとヒカゲツツジ:
尾根に出て少し登るとアカヤシオがお出迎えです。ちょうど満開でした。
さらに次石山頂上付近ではヒカゲツツジも満開でした。
スギやヒノキの植林地がほとんどのこの山塊で一年のうちこの時期だけが華やかになります。
頂上から右に折れて主脈の縦走になりますが、尾根をたどるのが難しく、前回と同じ地点で同じようにルートミスしてしまいました。尾根を外すと危険な岩場に出てしまい修正するのにとても難儀をします。鹿沼の山の多くは麓から見るとスギやヒノキに覆われた凡庸な里山にしか見えませんが、ひとたび入り込むと突然現れる岩場や複雑に入り組んだ地形に翻弄されることになります。行く度に鹿沼の山は怖ろしいという印象が強くなります。鹿沼の山は怖ろしくて楽しい。(^_^)
アカヤシオ
ヒカゲツツジ(撮影:ポレポレHC ひかげつつじ氏)
満開のイワウチワ:
今回もルートをミスしてままよと強引に下ったらちょうどイワウチワ群落に出ました。稜線直下からイワウチワが咲いていましたからかなり規模の大きな群落です。薄暗い杉の植林地の林床を華やかにしていました。
【便利帳】 トイレ:なし 【収穫】(^_^; 2014-4-6 7片20g