椀名条山 氷室山 根本山 わんなじょうやま1051.8m
安蘇山塊の主脈から西へ一直線にやや長大な尾根が派生しています。その尾根のほぼ中間の高みが椀名条山(椀名條山)です。
昔、安蘇の山々を歩き始めた頃、書物で篤志家向きのコースとして紹介されていたことで知って以来いつも気に掛かっていた山ですが何故かこれまで縁がなく登らぬままでいました。ところが最近、市販のハイキングマップにさえルートが示されるようになってしまい、靴跡で汚れないうちに出掛けてみる気になりました。
やはり歩くなら周回コースが楽しいので、椀名条山から、十二山、根本山とつないでたどりました。
大規模伐採や林道延伸が進んでいるのが気がかりですが、落葉樹林の風光や足尾、日光の展望が楽しい珠玉のルートでした。
【日程】 2007年11月25日 【山域】 安蘇 【地図】 1/25000沢入
【アクセス】 国道122号沢入から黒坂石(くろざかし)方面へ。(黒坂石バンガローテント村案内標識があります。)
黒坂石バンガローテント村前で道が二分して右へ根本山を示す標識があります。分岐の左側が登山口でその脇に駐車地。【駐車地】 登山口前の路肩が広くなっています。2台ほど駐車可。(黒坂石バンガローテント村には駐車できません。)
写真左が黒坂石バンガローテント村。登山口は右手。
【コース】 黒坂石バンガローテント村前登山口−椀名条山−主脈椀名条山分岐−氷室山神社−氷室山参道分岐−中ノ沢分岐
−熊鷹山分岐−十二山根本山神社−根本山−黒坂石分岐−林道−きんごろう橋−山神社−黒坂石
(全行程7時間程度)
椀名条山頂上
中ノ沢分岐から足尾日光の展望
イヌブナの尾根(宝生山付近)
【メモ】
いきなり尾根の末端を喘ぎ登る:
沢入で国道から分かれて渡良瀬川を渡り、沢入駅前を通過した後、黒坂石川に沿って山間に入ります。やがて左側に黒坂石バンガローテント村が見えます。その脇で黒坂石川が二股に分かれ、林道も左右に分岐します。突き当たりの一段上に神社があります。その左手が登山口で、その登山口前がちょうどいい駐車地となっています。
地形図ではさらに先から破線が登っていますが、実際はもう少し手前から別の踏み跡が不明瞭ながら登っていました。しかし、突き当たりの登路が整備されていますのでこちらをとるのがよいようです。
伐採地からたぬき山、遠く赤城山
駐車地付近に狩猟のグループが集結していましたが、その皆さんが登山道に案内板をつけたりして整備してくれたそうです。狩猟は椀名条山の尾根ではなく別の尾根でやるから、との話でちょっと安心しました。(登山中、頻繁に猟銃の音が聞こえましたが、この季節は狩猟の方に猟をする場所を聞くとか目立つ服装にするとかの手だては必要です。たまたまこの日、棒の折山でハイカーが撃たれる事故がありました。)
いきなり尾根の末端を喘ぎ登る:
沢入で国道から分かれて渡良瀬川を渡り、沢入駅前を通過した後、黒坂石川に沿って山間に入ります。やがて左側に黒坂石バンガローテント村が見えます。その脇で黒坂石川が二股に分かれ、林道も左右に分岐します。突き当たりの一段上に神社があります。その左手が登山口で、その登山口前がちょうどいい駐車地となっています。
地形図ではさらに先から破線が登っていますが、実際はもう少し手前から別の踏み跡が不明瞭ながら登っていました。しかし、突き当たりの登路が整備されていますのでこちらをとるのがよいようです。
駐車地付近に狩猟のグループが集結していましたが、その皆さんが登山道に案内板をつけたりして整備してくれたそうです。狩猟は椀名条山の尾根ではなく別の尾根でやるから、との話でちょっと安心しました。(登山中、頻繁に猟銃の音が聞こえましたが、この季節は狩猟の方に猟をする場所を聞くとか目立つ服装にするとかの手だては必要です。たまたまこの日、棒の折山でハイカーが撃たれる事故がありました。)
登山口からいきなり急な木の階段となります。この階段は取り付きの急斜面が終わるまで続きます。ヒノキの植林地と雑木(コナラとクヌギ)の二次林が半々くらいの植生で、おびただしいドングリが落ちていました。きれいな林床や樹間にはなりますが背後の足尾の山々を楽しみながら、ひたすら登ること1時間半ほどでやっと椀名条山頂上です。このドングリの親木はどうの、あの山はどうの、と遊びながらの登りのためかなり遅めのペースとなりました。
大規模伐採で丸裸:
頂上から先は緩やかな尾根となり樹林の切れた場所から日光足尾方面の展望も得られるようになります。
ところが、いきなり行く手の空が広くなったと思ったら伐採地に飛び出しました。まるっきり丸裸です。足下から向かいの尾根の斜面まできれいさっぱり。どうやら皆伐してヒノキ林にするらしく、一部は植林を終えて鹿柵を張り巡らせていました。自然林の美しいところだけにちょっと残念ですが、林業としては私たちの楽しみになど当然つきあってはいられないということです。
皮肉にも丸裸の尾根から素晴らしい展望が得られます。たぬき山がなかなか大きく、さらにその先には赤城山が
横たわっていました。
ここで単独ハイカーに会いましたが、大戸川上流の白ハゲ口から越路館沢を詰めて氷室山を通って来たとの話、あまりのスピードにびっくりです。
安蘇の山らしいミヤコザサの尾根:
氷室山神社
伐採地を過ぎ広い尾根の登りにかかるとミヤコザサが姿を見せ始め安蘇の山らしい雰囲気になりました。
コナラ、クヌギからミズナラ、イヌブナに代わり、標高が高くなってきたことがわかります。
しかし、椀名条山を越えたあたりからマークのテープが10mとおかずうるさいくらいに結びつけられていて、これほど多いと野鳥などへの影響が心配です。限度を超えていますのでポリプロピレンのテープを選んで適当に退治しながらの登りとなりました。
石祠を見るとそこが主脈との合流点、逆に歩けば椀名条山への分岐点です。
そこからは勝手知った尾根道ですから気楽に歩いて氷室山神社まであっという間です。
氷室神社はいつもの静かなたたずまいで迎えてくれました。
神社の先が登山道の十字路となっていて左が三滝と旧氷室村参道方向、右斜めが根本山と熊鷹山方向、右に戻るように黒坂石下山道が分かれます。ここから下山すると先ほど見下ろした伐採地に降りてしまいますしこれから先十二山までの水平道の風光が素晴らしいので先に歩を進めました。
すぐに小さなピークを右に巻きますがこのピークにも登り返してみました。小さな石祠があり「氷室山入峰熊野修験」のお札が掛かっていました。(この修験者の札は椀名条山にもこの先の根本山にもありました。)
なるほどこのピークを氷室山としたのかと納得しました。氷室山はこの山稜一帯の総称のようですが、最近氷室山神社裏のピークやさらにその北のピークに個人が勝手に山名板を掲げてしまいちょっと混乱が見られます。むしろ石祠もあり標高も高いこのピークを氷室山頂上とみなすことも一理ある気がします。
それにしても限度を超えた数の勝手な山名板とテープマークにはうんざりします。
十二山までの水平道:
宝生山を巻き道で省略していよいよ十二山までの水平道です。この水平道はイヌブナ、ミズナラ、コナラ、クヌギなど広葉樹の樹林が続き安蘇山塊の中でももっとも素晴らしい景観の尾根ではないでしょうか。背丈の低いミヤコザサに被われた林床はまるで手入れされた園地のようです。ミヤコザサの生えていない斜面は分厚く積もった落ち葉が初冬の陽光に輝いています。稜線から見下ろすとそこには泉が鹿たちのよいぬた場となっています。
途中黒坂石への中ノ沢下山コースが分岐しますが、ここからの展望は抜群です。笹原を登山道が一筋下っていてその先の斜面は疎らなヒノキや広葉樹の林となっています。足尾全山と日光白根山方面が一望です。足尾山塊の広がりと白く輝く日光白根の高さが印象的です。
水平道を歩く
ここから下山するつもりでいましたが、まだ足も元気でしたので根本山まで回ってみることにしました。
十二山の巻き道を上ると熊鷹山分岐です。ここからは根本山と熊鷹山をつぐ良く踏まれた道となりますが、さすがにこの季節になると行き交うハイカーも少なくなります。
静かな根本山:
十二山根本山神社を過ぎて巻き道を見送ると根本山の登りとなります。これまでとは変わってやや荒れた印象の樹林の中をひたすら登ります。わずかな標高差ですが、そろそろ疲れの出てきた足にはつらい登りです。
山頂には単独ハイカーが一人休息していました。私たちもここで遅めの昼食としました。
根本山頂上
あとから2人組、さらに椀名条山から抜きつ抜かれつしながら同じコースをたどってきた3人グループ、たったこれだけで、春ならばたくさんのハイカーで大賑わいのこの頂上もこの季節は静かなものです。
日の短い季節なのでそうゆっくりもしていられず下山にかかりましたが、ここから先は未知の尾根で歩き始めていきなりコース取りに迷いました。頂上先の尾根上で左に下る踏み跡がありますがそれを示す案内標識は壊れていて小さく鉛筆書きで三境山を示す書き込みがあるのみです。黒坂石方面へは直進する方向にテープマークがあってこれをたどってみましたがすぐに急下降となって踏み跡も消えてしまい、この尾根通しには行けないようでした。どうやらこのテープマークは間違いのようで大迷惑でした。早く標識の修繕がなされると安全なのですが。
下山はちょっと難儀ですが大回りしたご褒美が:
壊れた標識まで戻り三境山方向へ逆落としの下降ルートを一気に下りました。根本沢を隔てて向かい側があの根本沢から根本山へ這い上がる鎖場ですから、こちら側も急峻なのは当然です。さらに尾根の左側(根本沢側)を鎖や固定ロープを頼りにトラバースするようになりちょっと緊張させられます。
鎖場を過ぎるとやせ尾根の小さい登降となり展望を楽しむ余裕も出てきした。このあたりからは全コース中一番の展望で足尾と日光が目の前いっぱいに広がっています。近景には椀名条山の稜線がせり上がりよく歩いたなぁとちょっと自慢な気分です。やはり安蘇山塊の盟主はさすがに山深いと感じます。根本山まで足を延ばして大回り周回にしたことでこの雄大な展望を得られたわけです。
根本山下山路から表日光連山 中景地蔵岳 手前椀名条山
眼前にあれは登りたくないなぁと思わせる大きなピークが現れますが、案ずることはなくその手前鞍部から右に戻るように黒坂石への下山路が分岐しています。小さな案内板がありますが逆方向なので振り返らないと気付きにくいかも知れません。
ここまで来て初めて、頂上先で迷ったコースがこれで正解だと確認できたわけです。
下山路はまあまあよく踏まれていて道を失うようなことはありません。はじめはヒノキ植林地ですがすぐに伐採地の小尾根となってひたすら降ります。右手を見上げれば根本山が大きくせり上がっています。
やがて植林地に入るとほどなく林道終点に飛び出します。伐採の拠点となっていて沢には不要材の丸太や大枝が乱雑に積んであってコースを阻んでいます。逆にここから根本山を目指すとこれが登山道とは思えずに迷うかも知れません。目をこらすと奥に根本山登山口の案内標がありますので目安になります。
下山点からきんごろう橋、山神社を経て約1時間、つらい林道歩きが待っていました。【便利帳】 トイレ:草木ダム 黒坂石バンガローテント村のトイレは使えません 【収穫】(^_^; 62片 95g