【メモ】 |
入山の林道:
明治17年の道標
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星野の里は花の時期を前にまだ静かなたたずまいです。以前は瀟洒なレストランやら喫茶店やらがあって冬もけっこう訪れる人も多かったいようですが、現在は閉店して寂しい風景になりました。
星野のはずれ(北西側)から地質たんけん館へ通じる林道が登って行きますのでここから入山します。すぐに道は二分してその分かれる場所に石の道標が立っています。「左粕尾道 右岩倉山道」と彫られていて、この記述から山名を岩倉山としているのサイトもあって混乱が見られますが地形図も日本山名辞典も地元の案内などの表記もみな「谷倉山」です。昔の石碑などを見ても漢字表記はけっこう適当に当て字を使っていることを併せて考えるとこの道標の文字だけで山名を岩倉山とするのは無理があるかもしれません。
それより興味を引くのは「左粕尾道」の文字です。この道標の建立は明治17年ですから当然道跡も残存しているはずです。
この先、稜線に登り着いて尾根道を歩いていてたしかに稜線を越える旧道を見ることになりますが、それは倒木との悪戦苦闘のあとということになります。 |
星野遺跡たんけん館
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星野遺跡地質たんけん館:
道標の分岐を左にとるとすぐに星野遺跡地質たんけん館の建物があります。建物内が掘削されていて実際の地層が見られるようになっています。これだけの深さまで実際の地層が見られるのは貴重です。ただし説明などは少し手薄かなぁという印象はあります。
山麓の無人の施設なので女性だけの訪問などはちょっと怖いのではないかという気もします。
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沢筋は惨憺たるありさま:
沢筋を覆う倒木
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たんけん館を過ぎてヒノキ林の中を進むと林道は沢沿いの山道に変わります。
安蘇山塊を襲った先年の雪害の傷跡はここでも残ったままで、幹が折れたり根こそぎ倒れたりしたスギやヒノキが右から左から倒れ込んで沢を覆い尽くしています。初めのうちこそまたいだりくぐったりしてなんとか先へ進みましたがいよいよ倒木が多くなってついに沢筋の歩行は諦めました。とてもとても進めるものではありません。
この状況は安蘇山塊の沢筋ではどこも似たようなもので、当分片付けたりはできないような印象です。ハイカーに人気の山では沢沿いとは別のルートを拓いたりしていますがあまりハイカーの訪れないような山域ではそれも望み薄で尾根ルートを選ぶしかありません。
もう無理と判断して尾根に這い上がることにしましたが右(左岸側)か左側か迷った末に以前歩いたことのある左側の尾根に登ることにしました。急な斜面を少し這い上がるとヒノキ植林地となり下草もなく消え消えに作業道跡も認められます。道跡の消えたところは枝尾根をはずすことのないように注意しながら一気に登りまた道跡が現れたら電光を切って道跡をたどり息切れで休み休みしながらなんとか主尾根まで這い上がりました。
主尾根には薄い踏み跡もあり藪も薄いので比較的楽に歩くことができます。 |
快適な尾根の縦走:
頂上直下のミヤコザサ
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まずは465m峰へ登り着きそこから東に方向を変えて主尾根の縦走が始まります。
465m峰から急な下りをこなすとあとはだらだらと谷倉山まで緩い傾斜の道が続きます。
ほぼヒノキの植林地なので展望もなくあまり面白味のない尾根道ですが、途中古い道形が現れて興味をそそります。その道跡はどうやらその経路から想像するに2通りの道があって一つは星野で見た道標の通り粕尾への峠道のようです。道形がえぐられた古道が尾根を越えていました。ただ、この道は星野側も粟野側も尾根からわずか下った斜面で消えてしまっています。尾根付近は崩壊することも少なく道がよく形を残すのでしょうか。
もう一つの道は尾根筋を通る古道跡です。峠越えの道があったあたりから似た形状の道が谷倉山を目指してジグザグに残っています。登山道が律儀に尾根を通っているのとは対照的に右に左に楽に歩けるように電光を切っています。作業道とも違いかなり広い道だったようです。谷倉山が信仰の山だったとも聞きませんので参道とも違うようです。不思議な道です。
やがてミヤコザサが現れて落葉樹林になるとほどなく頂上です。 |
頂上アンテナ
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ちょっと興ざめな頂上:
頂上にはどっかとアンテナが建っていて小広く切り払われています。展望もなくこれといって特徴もない頂上です。
古いガイドブックなどではこの先粟野側に少し下ると展望地があると記されていますが、行ってみたところすでに伐採地に植林されたヒノキが成長して展望は得られませんでした。植林地には背の高いネザサが繁茂して樹間の展望も得られません。わずかにアンテナ巡視の道から日光方面の山々が垣間見られる程度です。
ネザサをかき分けて展望地を探したもののどこからも樹間やネザサの隙間から覗く程度の展望でした。
頂上まで戻り一休みしてさてここから南東方向に伸びる尾根をたどって下山です。
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下山路:
唯一きれいだった落葉樹の尾根
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登りとは一転、下山の尾根ははっきりとした踏み跡が続き快適に歩けます。ただしヒノキ植林地なので興味をひく植生もなくまた展望も得られずただひたすら下山するという感じのルートです。
途中493m峰付近できれいな落葉樹林を通ったほかはあまり見所もありません。
493m峰の先で右に折れてしばらく尾根をたどると右に分かれる巻き道がありその先に梵天見晴らしの案内板がありました。ここも周囲の樹林が育ったせいか特に見晴らしが得られるということはありません。ちょっとがっかりな見晴らし台です。
この見晴らし台からは古道が現れてこれをたどると(途中の分岐は右へ)キャンプ場に降りつき人家の裏手から集落に出て駐車地まではわずかです。
(本来キャンプ場からはしっかりした道が通じているはずですが、なんでか人家の庭先に出てしまいました。) |
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