【メモ】 |
燕岳:
燕岳
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中房温泉から燕岳までの合戦尾根は北アルプス三大急登の一つとして知られていますが、まあ、看板ほどのことはありません。しかし、温泉手前の登山口までタクシーが入ってくれるおかげで、まだ山の気分にならないうちにいきなりの登りとなります。
あまり面白みのないルートですがここは我慢してひたすら登るしかありません。道はよく整備されていて、ちょうど休みたくなる頃を見計らって第1ベンチ、第2ベンチ、第3ベンチ、富士見ベンチと休憩ポイントがありますので、ペース配分はいやでも順調になってしまいます。
合戦小屋では名物のスイカを頬ばって大休止。
合戦小屋からも歩きやすい道が続きます。合戦の頭からは展望もあるはずですがあいにくの曇り空でなにも見えず、猿の群れやホシガラスなどの野生動物やウサギギクやトリカブトなどの花々を楽しみながらの登路となりました。だらだらと緩い登りをしばらくたどるとやがて燕山荘に飛び出します。
とりあえず荷物を置いて燕岳へ。
あいにく山頂ではガスに展望を阻まれましたが、途中から見た燕岳の優しい姿や、時折ガスの間から遠望できた鷲羽岳方面の景観にはやはり北アルプスの雄大さを感じることができました。
燕山荘は評判通りの気持ちのよい小屋です。食事時に隣り合わせたハイカーはアメリカの方で日本の山をほとんどくまなく歩いているようで、その山にまつわる知識にはビックリしました。
終日雨の中の縦走:
西岳への縦走は雨のスタートとなりました。時折ガスが流れて眼下に沢筋が垣間見える程度でほとんど一日中雨の中の縦走となりました。コマクサ群落もウサギギク群落も晴れてさえいれば鮮やかな色のはずが雨の中ではカメラに収めることもできません。
尾根筋にも燕岳の景観の延長のような奇岩がにょきにょきと林立しているのが見られるのですが、背景がガスの灰色のため迫力もありません。
雷鳥の親子
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そしてなにより残念なのは槍ヶ岳まで続く稜線の景色が全く見られないことでした。
途中、大天井岳の巻き道は岩場で雨の中では滑りやすく少々肝を冷やしました。
巻き道の悪場を越えると大天井ヒュッテです。温かいラーメンをいただいて雨をしのぎながら大休止としました。
雨脚は弱まるどころか風も強くなって、結局また風雨を突いての出発となりました。
西岳までは山腹を巻く灌木帯の道となります。
ここで8羽もの雷鳥の大家族に会いました。こんなにたくさん卵を産むものかとビックリです。しばらく道を空けてくれるのを待ちましたが一向に除けてくれる気配もないので仕方なく追い払おうと近づいたら雷鳥たちもそのまま登山道をひょこひょこ歩き出して、ちょうど私たちを道案内するような恰好になりました。しばらくそのまま大行列となりました。その恰好のかわいいこと。
道は赤岩岳も西岳も巻いて西岳ヒュッテに通じています。
西岳ヒュッテは小さな小屋ですが燕岳から槍ヶ岳まで一気に歩き通せない私たちにはちょうどよい位置にある小屋です。
表銀座の名に惑わされると意外に手強い東鎌尾根:
東鎌尾根の垂直ハシゴ
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翌日も雨で、停滞するのでなければとりあえず水俣乗越までは行かねばなりません。
西岳からは下る、下る、長いハシゴやくさりを頼りに森林限界どころか樹林帯まで下降します。
降り立った水俣乗越はエスケープルートが左の槍沢に向けて降っていきます。また右には天上沢へ降る踏み跡があります。ちょうど一息入れていたグループがこれから天上沢へ下降して翌日に北鎌尾根を登るということでした。この雨ではけっこう難儀したのではないでしょうか。
水俣乗越からも相変わらず登ったり降ったりのハードな尾根道が続きます。東鎌尾根の核心部と言っていいかもしれません。表銀座というのんきそうな名前から気軽に歩けそうな印象ですがどうしてどうしてなかなか激しいコースです。私たちは年長グループですからバランス感覚は若い人に比べればかなり低下しているはずで、雨に濡れた垂直の長いハシゴにはさすがハラハラしました。
ときどき霧が流れる隙間から槍沢が見下ろせますが、ゴーゴーと雨を集めた激流となっていました。
緊張のままヒュッテ大槍へ。ここまで来ればもう一安心です。ヒュッテ大槍で雨を避けてコーヒーブレークです。ヒュッテ大槍はなかなか雰囲気のよい小屋です。
しばらく休んでいるうちに雨音も静まったので外に出ましたが、すでに雨も上がってやっと雨衣から解放されました。
ガレの道をたどってあと一息で槍ヶ岳山荘です。
突然、ホントに唐突にという感じで頭上の霧がさっと晴れて黒い槍の穂先が現れました。まるで頭上にのしかかるような大きさです。3日目にしてはじめて見る槍ヶ岳。なんという劇的な現れ方でしょう。全員しばしオゥと声を上げて突っ立ったまま威厳あるその姿に呆然としてしまいました。その後またガスに包まれてしまいましたが、晴れ渡った空に突きあげるような穂先の姿も素晴らしいけれどガスの中から浮かび上がる黒々とした威容もまた得難いものです。
とりあえずは穂先に:
空身になってまずは穂先に。
若い頃にはひょいひょいと登れた穂先も年齢が行くとなかなか難儀です。昔より整備が行き届いて楽に登れるようになったとはいえ、蹴躓いたら真っ逆さまという想像をするとなんだか足がすくみます。
頂上には先客が2人、もう30分粘っているが全く景色が見えないとぼやきながら下っていきました。それからは頂上には私たちだけ。静かな3180mをじっくり感じながら霧が晴れるのを待ちました。
でも、頭上には青空が広がっているというのに周囲の展望は得られないまま30分が経ってしまいました。3000m級の山頂で見る青空の美しさ。まあ、それだけでも良しとしなくてはなりません。遠望は諦めて私たちも下山にかかりました。
夕方、小屋の前で雲上のひとときを楽しんでいるとあれほどしつこくまとわりついていた雲が晴れて穂先の全容が姿を現しました。慌てて穂先を目指すハイカーが群れて登っていきましたが、彼らが登り着く頃にはまたガスの中となり、さらにその後から登った人たちには槍ヶ岳が微笑んだと言うことですからなんとも気まぐれなものです。
夜は運良く恒例のフルートコンサートが開催されて、桂綾子、聰子姉妹の音色を楽しむことができました。桂姉妹、このコンサートのためにここまで登って来るんですね。
山旅のよい思い出になりました。
槍沢の大景観:
最後の日は上高地までの長丁場ですが、またガスの中の出発です。でも前日までこれだけ降られて来ると雨が降らないだけでも有り難い気持ちです。
槍沢上部は晩夏の花が咲き誇って花好きの私たちには楽しい道でした。
しばらく下って殺生ヒュッテを過ぎると突然周囲が明るくなって見上げる位置に槍ヶ岳が姿を現しました。今度は青空の中にすっくと立ち上がる姿です。一幅の絵のような景観です。いまさら槍ヶ岳かよという気分もあった今回の槍ヶ岳山行ですが、やはり槍ヶ岳は槍ヶ岳、最後の最後で荘厳とも言える姿で私たちを見送ってくれたようです。
荘厳、晴れる槍ヶ岳
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うんざりする上高地までの道:
しばらく槍沢の花々を楽しみながらぐんぐん高度を下げて、やがてカールも終わってV字谷となるとあとはひたすら上高地までのアルバイトとなります。槍沢ロッジ、横尾山荘、徳沢園、明神館と休憩ポイントがほぼ1時間ちょっとの間隔でよい目安になります。
登りにとるにせよ、下りにとるにせよ、上高地からの入下山は必ずこの道をたどるわけで、これを歩く槍ヶ岳登山者はそれだけでも、エライ。(^_^; |