【メモ】 |
大丈夫かと思うような登山口:
駐車場は広くて清潔なトイレもあるので便利です。滝見物が目当ての観光客は1mでも歩きたくないのか最奥のみやげ物屋付近まで突っ込んでいきますからこちらはけっこう空いています。
身支度をしてトイレを済ませていよいよ出発です。気温は−4℃、さすがに滝が凍る土地です。
駐車場の斜め向かい(わずかに戻る方向)に生瀬富士登山口の標識があります。小さな案内板ですから車では通りすぎてしまいそうです。そのためにもこの無料駐車場を利用するのがベストです。
民家の間の舗装道を通って山際に向かうと荒れた感じの山道へとつながります。大型ゴミの散らかった破損しかけた物置小屋らしい建物の裏手に回り山道へと入っていきます。なんだか先が大丈夫かと思わせる不安な山道です。
手入れのされていない篠竹や雑木の茂る里山ですが、道が徐々に山らしくなって右手の沢を見ながらなだらかに登っていくとやがて電光を切って尾根に登り着きます。
このあたりまで山芋掘りの跡がそこここに見られますが掘りっぱなしの赤土が流れて植生を痛めています。イノシシよりお行儀の悪い人たちです。
尾根の途中から檜植林地が尽きて落葉樹林になるとやっと楽しい山道となります。コナラ、クヌギ、シデ、イヌブナ、ダンコウバイ、ヤマザクラなど樹種も多く、それらが辺り一面葉を落としてくれたおかげ冬陽を受けて心和む景観にしてくれています。
複雑な地形と手強い岩場:
生瀬富士と派生岩稜(立神山より)
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急な尾根を登りきるといったんなだらかになりますが主尾根がどれか判断できないような複雑な地形で、以前の案内標識がない頃にはかなり難しい山だったことでしょう。ルートを誤るといきなり岩に阻まれたはずです。
しかし、現在は生瀬中学校の生徒が造った案内板が要所にあって間違うこともありません。
岩をよじ登るような箇所も現れますが鎖やロープがあって特に危険も感じられず、むしろ爽快な展望がうれしい快適な登りです。
大展望の頂上:
最後の急登を登り切ると待望の生瀬富士頂上です。
南東側が切り立った狭い頂上からの展望は抜群です。
栃木県境の丘陵地の先に高原山、日光連山、足尾、まで届く大展望です。
北西側がやや木々に邪魔されているのでそちらに回り込んでみたところやせた岩稜が続いていました。わずかに赤松があるもののおおむね裸の岩尾根で素晴らしい景観です。おっかなびっくり進んだもののどうも高所恐怖症気味なのであきらめていたら仲間が大丈夫とずんずん歩いて行って最後の高みまでたどり着いてしまいました。
それではとたどってみたら両側が切れ落ちてつっころんだらただでは済まないようなやせた岩尾根で、やっぱりおっかなびっくり、へっぴり腰でどうにか先端まで着くことができました。
なんと爽快な岩尾根ならではの絶景。西、北、東の山々が一望です。遠望もさることながらむしろ断崖上の高みですから足下の景色も素晴らしく、眼下の立神あたりののどかな山村風景や茨城北部の延々と続く丘陵が見通せます。またそれらの優しい景観と今立っている岩稜の険しさとの対比が不思議な感覚さえします。
岩稜に立つ(あまな氏撮影)
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振り返ると逆光ながら眼前にこれからたどる立神山が大きく、さらにその先には山塊の主峰男体山が高く、その左手には特長ある白木山も見えます。
男体山は頂上からの断崖を真横から眺める位置になります。 |
立神山:
岩稜から生瀬富士頂上まで戻り、次の立神山を目指します。いきなり逆落としの急な下りです。しかしロープが張られていますので難儀することはありません。
落葉樹林の美しい斜面です。とりわけ左側の樹林は林床がすっかり落ち葉に埋もれて冬陽がまぶしいほどです。
頂上から見た鞍部はかなり高度を落とすかのような印象でしたが実際はそれほどの登り返しもなくあっという間に隣の立神山頂上へ。
頂上は樹林に邪魔をされて北側のみの展望となりますが、先ほどの生瀬富士が目の前に大きく座っています。
ここでゆっくり昼食としました。
アップダウンの繰り返しがきつい縦走尾根:
さて、ここからいよいよ縦走です。
立神山の下りもまたロープ頼りの急な道で一気に高度を落とし、その後登ったり下ったりの繰り返しになります。
右側の久慈川側は急峻な断崖、左は優しい斜面、これはこのあたりの山塊の特徴でもあります。
それぞれはたいした登りでもないのですがなにせ数が多くやや長丁場ですので消耗します。
どのピークも同じような様子で現在位置が判断できませんが唯一案内標識に「かずま」と記された鞍部があり良い目安になります。ここは登山道の十字路となっていて右に折れるとどうやら直接袋田の滝の下流(滝本)に下れるようです。
袋田の滝を真下に見下ろす豪快な展望:
かずまから少し登り返すといよいよ核心の袋田の滝展望地です。最初は前方に袋田の滝を見てまずは歓声。見下ろす方向にほぼ全景(下部は隠れます。)を見ることができます。
さらに歩を進めると滝の真上の展望地に飛び出します。まるきり真上。足下に半ば凍結した袋田の滝を見ることになります。
ほぼ凍結した四段重ねの袋田の滝
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豪快。まさしく豪快。
カメラを構えるにも足がすくみますが、ちょうどいい具合に立木があってこれに身を預けることができます。ただ基礎のあやしい岩盤上の立木なのであまり体重はかけないにこしたことはありません。下から見れば解りますがここは滝から一気に100mほども立ち上がった断崖上です。
滝はなかば凍結してその氷の上を流れ落ちていました。白い滝。
たぶん観光客はこんな景観を知らずに私たちの足下の観爆台で歓声を上げていだろうなと思うとちょっと優越感。(^_^)
対岸に渡れない:
見飽きない景観ですが最後の徒渉が心配で、万一渡れないと時間を奪われますからそういつまで楽しんでいるわけにもいきません。
対岸より徒渉予定地点付近(水量が多くて断念)
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道はさらにアップダウンをし、最後の下りで対岸の一軒家を見て滝川に降り立ちます。ここは渇水期であれば飛び石で対岸に渡れるというのでそう期待をしていたのですが、なんと水量が多くてどうにも難しい感じでした。川はなかば凍り付いていて万一転びでもしたら冷たい水をかぶってただ事ではなくなってしまいます。夏ならばジャブジャブ渡れるのでしょうが、安全を期して上流の徒渉点を見つけることにしました。
さいわい川辺に踏み跡が続いています。わずか上流に板橋が見えました。これ幸い、と思ったのはぬか喜びで、その橋に達する前に川は二股となってその板橋は本流に架かっているのでした。私たちのいる岸は分流した大野川を渡ってから本流を渡らなければならなかったのです。
仕方なしさらに上流へ。行けども大野川にも徒渉点はなくそのうちに道は小湿地の中に消えてしまいました。(湿地は凍っていてどうにか通過できました。)
そのままかまわず進むと人家が見え果樹園らしき畑地に出ることができました。かなり上流まで歩いたことになります。
ここからはいったん舗装道に出て里歩きとなりました。このまま舗装道を行くと国道の新月居トンネルに出てしまうはずで戻るのに一苦労です。ですから大野川の橋を渡ってからまた川沿いに戻ることにしました。畑地の中をあぜ道をたどって突っ切って先ほど見た板橋を渡りやっと滝川本流の対岸へ渡ることができました。さらにもう一つ支流をこれまた板橋で渡りやっと最初の下降地点の対岸の一軒家に戻れたわけです。
ここから流れに沿って下って生瀬の滝を見ようとしたのですが、残念ながら道形はなく、かつて観瀑遊歩道でもあったのか構造物が無残に崩壊していました。仕方なく生瀬の滝へこちらからは行くのは断念して、水流がほとばしり落ちるのを上から覗いて戻りました。
一軒家は無人ですぐ前まで舗装道が通じています。ちょうどここで先行のハイカーのみなさんが戻ってきましたのでどうしたのかと思ったらこの舗装道を行ったら国道に出てしまったということでした。歩道はちょっとわかりにくいですが川沿いと舗装道との中間に山に登るように付いています。
なりゆきで月居山へ:
歩道を上るとすぐに生瀬滝への道が分かれます。しかし「崩落のため通行禁止」の立て札があってどうもこちらもだめなようです。結局生瀬滝は仕方なしあきらめました。
なかば凍った生瀬滝上部
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道は袋田の滝に降りるはずですが、降りるどころかどんどん高度を上げていきます。完全に山登り。もういったん気持ちは終えているのできついこときついこと。
やがて道は二分し、右には袋田の滝、左には月居山へ続きます。
こんな高くまで登ったのだからいっそ月居山まで行こうということになり、私たちはヤケクソ気味で左に階段の道をとりました。
ここからずっと頂上まで階段が続きます。ときどき観光客が降りてきますが一様に後悔顔でした。気楽に登ってしまっては確かに後悔するくらいきつい登りです。
しかし、振り返る景色は豪快です。遠い展望も得られますが、なにより先ほどの滝展望地の断崖が真正面で、ええぇ、あんな所にいたのかとびっくりです。展望地から滝まで垂直の断崖です。
きつい階段登りも双耳峰の一方の高み(前山)で終わります。ピークの先にはベンチもあり、さらに鞍部まで下ると朱塗りの月居観音堂と鐘撞き堂が立っています。観音堂は駐車場からもよく目立ちます。
本来、月居山のピークはさらに先の後山のようですが、このときはそれを知らずここから下山しました。
下山路はほとんどコンクリート舗装されていて、そのためむしろ落ち葉が滑って歩きにくい道でした。
最後はみやげ物屋の並ぶ道路に降り立ちました。
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