目次
生瀬富士 袋田の滝 周回 なませふじ402m ふくろだのたき

天空にいる錯覚
2017-3-5(こちら)
かつて複雑な地形と険しい岩場に困難を極めたという生瀬富士も現在は道形もしっかりして道標も整っていますので鎖場などはあるものの一般コースとして歩けるようになりました。
しかしアプローチにもっぱら車を使う私たちは周回コースをとるためにいろいろコース取りを工夫しなければならずこれがなかなか難しいものです。生瀬富士から立神山経由で縦走して袋田の滝を俯瞰する展望地を通ろうとすると、幾通りかの選択肢があるもののいずれにしてもけっこう長丁場となるのは致し方ありません。
もう少し楽なコースはないものかと前々から思っていましたが「かずま」と呼ばれる鞍部から一気に袋田の滝へ下れるコースがあるいうことで出かけてきました。存在だけは以前から聞いてはいたものの稜線から袋田の滝ですからほとんど真下という感じで、どんな急斜面や岩場の下降が待っていることやらと敬遠して行こうという発想すらなかったのです。ところがネットを巡ってみるとここを下っているみなさんもけっこう多く私たちにも行けないことはなさそうだという気になったのです。

2022-2-6(こちら)
結氷したとのニュースが流れたので早速行ってきました。いつもの生瀬富士−立神山−滝のぞき−かずま−滝本と省エネコースでしたがさすが滝も凍る季節とあってちょっと風が吹いただけで寒いのなんの。
滝はほぼ凍っていました。圧巻。
滝川でしが(氷花)を見ました。温暖化のせいか最近ではなかなか見られないと言うことです。

関連ページ 生瀬富士 生瀬富士岩稜 


          山名板がにぎやかな生瀬富士頂上

       袋田の滝を見下ろす(撮影kuwa-nyanさん)
【日程】 2017年3月5日(こちら)
2022年2月6日(こちら)
【山域】 奥久慈
【天候】 快晴

【アクセス】 常磐道那珂ICから広域農道に出て農免道路入り口交差点(右に池がある)で右折して国道118号へ。
大宮を経て大子の袋田の滝入り口で右折、国道461号へ。
すぐに左に袋田温泉思い出浪漫館を見たら左折して橋を渡り次の橋の手前右側に無料駐車場。
その先にも無料駐車場がありますが生瀬富士を目指すなら最初の駐車場が便利です。滝から遠いので観光客は敬遠するようで比較的空いています。
【駐車地】

     駐車場から生瀬富士、立神山を仰ぐ

大きな無料駐車場 数十台は停められそうです。
駐車場からこれから目指す生瀬富士、立神山を仰ぎ見ることができます。
きれいな洋式水洗トイレがあります。
【コース】
駐車場 - 車道をわずかに戻る - 沢沿いの道
- 尾根 - 生瀬富士
- 岩稜往復 - 立神山 - かずま - 滝展望地 - かずま - 滝本
- 駐車場
実行程約5時間 一般〜中級向き


【メモ】
2017-3-5
不安な登山口:

駐車場は広くて清潔なトイレもあるので便利です。袋田の滝が凍結していないせいか観光客も少なくけっこう空いていました。
駐車場の斜め向かい(わずかに戻る方向)に生瀬富士登山口の標識があります。古くて小さな案内板ですから注意していないと通り過ぎてしまうかも知れません。
民家の間の舗装道を通って山際で狭い舗装道にぶつかります。そのままその舗装道を越して山道がありますので大型ゴミの散らかった間を通って建物の裏手に回ります。いつもながらこのゴミの道はこの先の登路にも不安を感じますが登るほどに普通の山道になっていきます。
最初は棚田跡の谷沿いの道ですがやがて電光を切って尾根に登り着きます。一部伐採地ですがその先で落葉樹林になるとコナラ、クヌギ、シデ、イヌブナ、ダンコウバイ、ヤマザクラなど樹種も多くなりやっと楽しい道になります。
徐々に傾斜も増して生瀬富士らしくなったと思う頃大岩が現れ最初の鎖場になります。大岩を鎖に頼りに登りきるとその先にも次々に岩場が現れ気が抜けません。

大展望の生瀬富士山頂:
頂上から久慈男体山

最後の岩場を登りきると突然頂上に飛び出します。ほぼ全方位の展望です。天空に放り出されたような鋭峰のてっぺんです。
あいにく穏やかすぎる天候で靄ってしまい遠望は無理でしたが常陸の山々、栃木茨城県境の山々が続いています。どちらもほぼ平らな丘陵のような地形が延々と続いてどこがどの山やらさっぱり分かりません。この茫洋とした山の連なりこそこの山域の特徴です。じつに心和む景観です。
その中にあってこの生瀬富士に始まり男体山、奥久慈岩稜、篭岩へと続く険しい岩稜帯の壁は場違いな感じさえします。この連続する壁は山の連なりと言うより壮大な段差というべき姿で、西側のなだらかな台地が久慈川めがけて落ち込んだ地形と言えます。実際に袋田の滝の上流へ行くとこれがあの豪快な滝の元なのかといぶかしく思えるほどゆったりとした流れの小河川に過ぎません。周囲も丘陵と田畑が広がるのどかな景観です。

岩稜と常陸の山(撮影kuwa-nyanさん)
岩稜で遊ぶ:
生瀬富士から北東へ向けて岩稜が派生しています。途中固定ロープなどもありますが注意深くたどれば大丈夫、ぜひとも先端の爽快な景観を楽しんでいただきたい場所です。ごつごつとした痩せた岩稜の豪快さと準平原のごとき平坦な山並みとの対比に戸惑います。
先端に大きな岩コブがありさらにその先に梵天の立つ小ピークが連なっています。とはいえ高所が苦手なので最近は最先端まではちょっと躊躇してしまい仲間だけ見送ってカメラ係になることが多くなりました。
岩がごつごつしていてスリップの心配はないものの靴底が引っ掛かって転倒でもしたらケガでは済まない断崖上なのでくれぐれも気をつけなければなりません。

     岩稜を振り返る

    岩稜先端のコブに立つ この先に梵天の立つ最先端のコブがあります

袋田の滝展望地へ:
ほっとする落葉樹林鞍部

頂上からは急降下が待っています。固定ロープがあるので難なく通過できますが、なるほど麓から見ての通りの急斜面です。
降りきった鞍部付近はきれいな落葉樹林で足も気分もほっとします。ただしこの付近は右側が灌木に隠れていながら断崖になっていますので注意が必要です。
鞍部からは降った分だけ登り返さなければなりません。一汗かかせられます。登りきったところが立神山。北側の麓の集落立神の地名と同じ山名です。展望はあまり優れませんが今しがた歩いてきた生瀬富士と派生岩稜が目の前に横たわって見えます。
ここで昼食の時刻、わずかな広さの平地ですが風当たりも少なく休憩にはほどよい場所です。柔らかな陽差しを浴びながらタテハ蝶が舞っていました。
立神山からも生瀬富士と同じような急下降です。一気に降ってからは小さな登降を繰り返す縦走になります。それぞれは小さなコブですが越えてもさらに次のコブという具合でうんざりします。
かずまを過ぎ、やがて前方に滝を見下ろしてからさらにひと頑張りで待望の袋田の滝展望地です。

袋田の滝(撮影kuwa-nyanさん)
袋田の滝:
展望地からはほぼ真下に滝を見下ろすことができますが危険と隣り合わせですので慎重にも慎重を重ねて覗かなければなりません。とくに雨の後などは滑りやすいのでやめておいた方が無難です。
今回は凍結していないとの情報は得ていましたのであまり期待はしていませんでしたが、それにしても迫力不足です。全面凍結の様子を知っているのであまりの違いに唖然としました。やはり渇水期なのでそれも仕方ありません。全面凍結すれば上流からの水がどんどん積み重なって凍っていくのでたとえ渇水期といえどあの盛り上がるような氷瀑の迫力が生まれるようです。

かずまから下山:
幻想的な岩場

展望地からかずままで戻りいよいよ急下降です。
ところで「かずま」という峠の名ですがその名の由来がわかりません。ひらがな書きですし。
かつては滝本と立神を結ぶ峠道だったと言うことですが生活道路がこの険しさかとびっくりです。昔の人は歩く、登る、なんてことはなんでもなかったようですね。
展望地で会った少年の話では立神から登って来てかずまから下山するとのことでした。以前、私たちも立神から入山したことがありますがその時は肝を冷やす岩稜に登り詰めたのでまさかそのルートかと思ってびっくりしましたが小学生の妹を連れているので簡単な道で来たと言うことでした。立神から岩稜ルートの他に道があるそうです。かずまからそちらへの下山路も厳しくはないそうです。私たちの目指す周回ルートがいわば南回りとすると北回りの周回コースと言えます。
いよいよ緊張して下山にかかりましたが昔の峠道だけあって道形はしっかりして迷うようなこともまったくありません。一部山道が崩れて滑りやすい所もありますが固定ロープもあり注意さえしていればまず大丈夫です。
途中幻想的な岩場がありケヤキがその大岩の隙間に根を張ってタプロームさながらの景観です。
最後まで急な道のままやがて古い堰堤が現れて(ここは堰堤上を右にルートをとります。)、さらに遺棄された茶畑を通って廃屋の脇を降ると観光客の行き交う道路に出ます。逆コースをとろうとするとなんの案内板もなくここの入山点が分かりにくいかも知れません。(旅館「滝美館」の看板を目印に滝美館の駐車場をすり抜けて入山します。)
最後は観光客に混じって駐車場まで戻りました。結局かずまからの下山路は案じたほどのことはなくて急下降と滑りやすいことさえ頭に入れておけば小回り周回コースとしてまずます安全に歩けました。

2022−2-6
危険な岩場を避けるつもりがさらに危険なルートに:
袋田の滝が結氷したとのニュースでそれとばかり娘と出かけてきました。この寒さじゃやっぱり滝も凍るよな。
生瀬富士頂上手前の岩場を避けるように巻き道があったので疑いもなくそちらを取ったところだんだん怪しくなってこりゃ無理かもと思ったときにはすでに戻るのは危険な状況になりました。仕方なしに木の根、岩角を頼りに必死に突破したらなんと生瀬富士の北東に延びる岩稜の中間に出ました。ところが両側から岩がせり出していてザッグが挟まってにっちもさっちもいかず立ち往生となってしまいました。岩稜を往復してきたハイカーが上に引っ張って手伝いましょうかと言ってくれましたが、なるほど上には隙間があるのか。自分で自分の置かれた状況がわからん。(^_^;
体全体をせり上げてどうにか岩の隙間から逃げることができて、そのまま岩稜を伝って生瀬富士山頂に登り着きました。めでたしめでたし。いやはや、生きた心地がしなかったな。大いに反省した次第です。

足下100m 袋田の滝
 
滝のぞき:
袋田の滝の真上の展望地には「滝のぞき」と書かれていました。真下に凍りついた袋田の滝を見て尻の穴がむずむず、どうも高所は苦手だな。もしここでめまいなんかしたらお陀仏だな。
同行の娘の素朴な疑問。全面結氷したら川上から流れてくる水はどうなるの?どんどん貯まっちゃうのかな。ホントは全面結氷などしてなくて氷の下を流れてるのさ。(^_^; 
下山はかずままで戻って一気に滝本を目指して転げ落ちるように駆け下りました。いやぁ、いつもながらこの急坂の下降はすごい。最近このルートを選ぶハイカーが増えたせいかふかふかの表土がなくなって固い地面の表層に小砂利が敷き詰められたような具合になって滑りやすくてかなり難儀します。ルートに迷うようなこともなく急下降以外には何の問題もありません。

初めてしが(氷花)を見た:
小さいながら しが
 

帰り駐車場に戻るために川縁を歩いていたら滝川にしが(氷花)が流れていました。久慈川本流じゃないので小規模ですが小さくてもそれなりに風情はあります。板状の氷片が流れている隙間にシャーベット状の氷が遠慮がちに流れていました。
温暖化で最近なかなか現れないそうですが、今年はやっぱり寒いんだね。
【便利帳】 トイレ:駐車場
【収穫】(^_^; 2017-3-5 26片 150g
2022-2-6 16片 50g
【寄り道】  アップルパイ:袋田の滝、旅館豊年満作の焼きたてアップルパイ。近年人気で行楽シーズンは行列です。あつあつがおいしい。
鮎:袋田の滝でも食べられますが、帰りに東北道回りにして那珂川町の「林屋」さんの焼き鮎を買って帰りました。
舟納豆:道の駅常陸大宮かわプラザの4kmほど北。舟形の容器の納豆です。