【メモ】 |
小中川本流から入山:
小中川本流 駐車地付近は優しいナメ
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駐車地から尾根の様子を見上げながら地形図とにらめっこで入山点を探りましたが、尾根突端は急峻でどうやら苦労しそうなのでやはりしばらくは小中川をたどることにしました。地形図では小中川の両岸には岩場や崖が連続していますので早めに尾根に取り付く方が無難なようです。
林道のヘアピン箇所からは荒れた林道が直進して延びていますが、これはすぐに消えてしまいます。早めに飛び石で対岸に渡り、ほどなく右に水量の少ない枝沢が分かれていましたのでここを入山点と決めました。しばらくは沢の中や沢の右側の歩きやすい鹿道をたどりました。熊のクソがいくつもあって気分は野生真っ只中です。さすがに心細く、北海道でしか使わない熊よけ鈴をザックの底から引っ張り出しました。こんなモンが役に立つかは怪しいですが、心細さは多少とも紛れます。小さな流れや窪地がいくつも分岐しますが、あくまで本流をたどるとチョロチョロのナメ滝に阻まれます。頃合いかと思ってここから右の枝尾根に取り付きました。なんと、慣れない目では気づかないほどかすかですが作業道の痕跡が電光を切って登っています。かつては人の歩いたこともあるようですが、今はまったく鹿の足跡のみです。
尾根にも一条、道の痕跡:
アカヤシオのトンネル ほとんどツツジ純林
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沢筋の湿りが消えるとあたりの疎林はトウゴクミツバツツジとシロヤシオの競演となりました。
尾根にはかなりはっきりした道跡があり、別の入山点をうまく探し当てればより簡単に尾根に達することができそうです。(上部から俯瞰して判ったのですが、反対の沢、つまり下ノ滝沢には伐採林道があり、終点から伐採境界を一気に登ってこの尾根に達することができそうに見えます。ただし伐採跡がイバラになっていることも考えられますし、周回で駐車地をどうするかも問題です。)
道跡は鹿が使っているとみえてなかなか快適に歩けますし、道が消えても左に寄れば下草も薄く適当に歩くことができます。おおむね尾根の左(西)は下草が薄く、右(東)は笹が茂っています。ツツジは左斜面に多く生育していました。ミツバツツジもきれいですが、ここのシロヤシオの密度は並大抵ではなく、それが延々と連続して尾根上部まで続いています。
しばらく続いた緩い傾斜の尾根から急な登りになる地点で左に大きく展望が開ける崩壊地に出ます。どうやら古い伐採地らしく、ここではミヤコザサさえ生育できなかったようであちこちで斜面が崩れていました。合い向かいには郡界尾根の八重樺原がやや眼の下に一望です。
急登をこなすとまた疎林と笹の織りなす気分の良い尾根となりますが、唐突に「あかなぎ」と彫られた石柱の山標識に出くわしました。なんの標識か、また「あかなぎ」がなんなのか皆目わかりませんが、1504m標高点あたりになります。このあたりも変わらずミツバツツジとシロヤシオは続きます。
さらに高度を上げると鮮やかなアズマシャクナゲも現れ、なんと贅沢な、と感激しているうち、今度はシロヤシオからバトンタッチするかのようにアカヤシオにも囲まれだしました。
1649m点付近は尾根筋がアカヤシオのピンクに染められ、アカヤシオ回廊と呼びたい景観、これには同行者のいない山行がもったいない気持ちでした。
前袈裟山頂直下の雰囲気もまたオツな:
笹の密生したコメツガ幼樹林をくぐり抜ける
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アカヤシオの樹林を抜けると、いよいよ山頂への急登となります。まずはシャクナゲとツツジの茂みとなり、身をかがめて藪の薄い所を探しながら登ります。さらにコメツガの幼樹をくぐり抜け、いよいよ山頂直下の笹の斜面となると、ここはもう体力勝負。しかし前々週の山頂直下南斜面のように笹の海を泳ぐようなこともなく、コメツガやダケカンバの樹林がなかなか好ましい景観です。これを眺めては一息入れながら登れば大して苦にもなりません。前面の密笹を左に左にとトラバース気味に避けるとすっかり樹林の中となり案外簡単に、ひょっこり山頂の一角、南西隅の山桜の根方に飛び出しました。まだ時刻も昼時には早く、山頂にはハイカーもちらほら程度でした。しばし郡界の花の咲き具合などお聞きしたり、ゴミを拾い集めたりしながら一休み。
郡界尾根も花、花、花:
後袈裟めざして山頂を後にするや、ここのシャクナゲ群落が早くも開花していました。
グンと下って八反張コル。数年前整備された鎖も支柱がぐらついてきていて、いずれ危険な状態になりそうです。ハイカーの数も以前とは比べものにならないくらい増えていますので、一枚岩ではなくザレのリッジは崩壊寸前です。
このコルの先の岩場に群生するユキワリソウはどうかと楽しみにしてきましたが、今年の季節の移ろいは超のんびりでわずかに群落から離れて数輪だけ可憐な花を開いているばかりで、群落はまだ蕾ばかりでした。
後袈裟丸山は水分補給しただけで素通りして、すぐに下山にかかりました。後袈裟西の山稜部にはアズマシャクナゲの大きな群落があるのですが、ここはまだ開花には時間が必要なようでした。ぐんぐん下ってシラビソ林を抜けるといよいよ花の尾根となりました。まずはアカヤシオ、さらにアズマシャクナゲ。今年2005年のシャクナゲは異常ともいえる花つきです。展望岩あたりでちょうど満開、そして石神様付近では日当たりが良すぎるのかちょっと盛りは過ぎてしまっていました。なぜかさらに低い標高のシラビソ樹林下でまた満開となって、最後まで楽しませてくれました。
向かいの前袈裟の斜面には残雪も残り、その白い筋と平行にアカヤシオがびっしりと群生してピンクの縞模様となっていました。
ミツバツツジとシロヤシオもこれでもかというほどの咲き具合で、毎年登る私にもこれほどの年は覚えがありません。
八重樺原は何回来ても本当に良いところです:
シロヤシオの群生を最後に八重樺原の笹尾根となり、見上げると小中本流のはるか先に八反張コル、その右と左に前袈裟、後袈裟が高々と山体を持ち上げています。前袈裟からは長大な小中川左岸尾根が、後袈裟からはこれまた長大な郡界尾根が張り出して、袈裟丸山の大きさを実感できます。
今までは未知の尾根であった小中川左岸尾根が今は花の群れ咲く身近な尾根となって横たわっています。
しばらくは笹原に座ってゆっくり今日の花たちを思い返して満足なフィナーレとしました。
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