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  袈裟丸山(下の滝沢左岸尾根)  けさまるやま 1878.2m

前袈裟丸山の南に延びる長大な尾根を登る

前袈裟丸山の南面にはいくつかの尾根が南走しています。後袈裟を経由する郡界尾根、郡界尾根とは小中本沢を隔てて南西に延びる尾根(仮に小中本沢左岸尾根)、さらにその東の下の滝沢と弓の手沢とに挟まれた尾根(仮に下の滝沢左岸尾根)、弓の手沢とヒライデ沢に挟まれ前袈裟前衛峰を経て南東(途中で南に方向をかえます。)へ延びる尾根(仮に南東尾根)、1607峰(ロボット雨量計ピーク)から南西に延びる短い尾根、弓の手コースと呼ばれる尾根、1549峰からバラ沢峠へ延びる尾根(仮にバラ沢峠尾根)、そして二子山の尾根などです。
これらを一通り歩いてみたいと思ってアカヤシオの時期を選んで登ってきましたが、このうち二子山は国道からの登路はつらそうなので賽の河原側から往復してとりあえずいいかなと忘れて(^_^;、残るは下の滝沢左岸の尾根となりました。
下の滝沢左岸の尾根はこれらの尾根の中でも最も長大で、また最後に小中本沢左岸尾根に合流する直前の等高線の詰まり具合にはちょっと躊躇してしまいます。
実際、前袈裟丸山頂上から見おろしても尾根が前袈裟まで繋がってはいないで小中本沢左岸の尾根の壁にぶつかって終わっている感じです。
まあ登れなかったら引き返そうというつもりでアカヤシオの開花期を選んで登ってきました。

参照ページ
袈裟丸山塔ノ沢コース
袈裟丸山弓の手コース
袈裟丸山郡界尾根
袈裟丸山郡界シャクナゲ
袈裟丸山笹尾根バリエーションコース
前袈裟丸山東南尾根
前袈裟丸山東南尾根周回
袈裟丸山小中川本流左岸尾根
袈裟丸山オオノ沢左岸岩稜
袈裟丸山バラ沢峠尾根
二子山
(一般ハイキングコースではありません。)
【日程】 2009年5月10日
【山域】 安蘇
【天候】 快晴
【地図】 1/25000袈裟丸山
【アクセス】 国道122号を小中で左折。小中大滝の分岐を右に。下の滝沢手前まで。
下の滝沢の手前左手が伐採跡の植林地となっています。
【駐車地】 下の滝沢の伐採地の下の路肩に3,4台程度。
【コース】 駐車地 − 取り付き小尾根 − 1310m峰 − 弓の手沢源頭 − 小中本沢左岸尾根合流 − 前袈裟丸山
− 前袈裟前衛峰 − ヒライデ沢源流 − 林道 − しゃくなげ橋
約7時間 経験者向き
            前袈裟丸山頂上

        アカヤシオ

             アズマシャクナゲ

【メモ】 地形図からも難儀が読み取れるほどの尾根:
まだまだ前袈裟丸山ははるか遠く
長大な尾根でそれだけでもたいへんそうなのに、地形図を見ると尾根に取り付く箇所が見つかりません。舗装道路から入山するのにほとんどが急峻な斜面で、唯一どうやら弓の手沢右岸側にかろうじて小尾根を見いだすことが出来ます。
まずしゃくなげ橋脇に自転車をデポしてから入山点と定めた弓の手沢の橋まで戻りましたが、登ろうとしていた小尾根は伐採後の植林をしたばかりでガッチリとネットで囲まれていて通過できそうにありません。仕方なしその西の小沢を登りましたがじめじめして陰気な小沢で、その上行く手を砂防堰堤に阻まれてしまいました。右の尾根(最初ルートと定めていた尾根)に這い上がって見るとそこはすでに植林地は終わっていて落葉樹林となっていました。ここを強引に登れば主尾根に達することができそうです。
ただし木の根や岩角を頼りに身体を引きずりあげるような急な登りでたっぷり大汗をかかされました。

なだらかな尾根が続く主尾根:
主尾根に登り着いたところは1090m点と1204m点の中間あたりで、ところどころ露岩を乗り越えたりしながら新緑のまぶしい落葉樹林を歩く気分のよい尾根です。
徐々に落葉樹林からダケカンバ、カラマツ、シラカバ、ヤシャブシなどの疎林となって高原のような景観です。左には小中本沢左岸の尾根が並走し、その向こうに郡界尾根の八重樺原も顔を出しています。
地形図で見るとおりのなだらかな尾根は下草もほとんどなく随分歩きやすくなります。こんななだらかなままではいつになったら頂上へ着けるのか心配になるほどです。
ダラダラ登りのまま1310m峰に登り着くとカヤトとなって展望が開けます。南には田沢奥山を越えた先に赤城山が大きく、また西には小中本沢左岸の尾根が横たわり、北には大きく前袈裟丸山が圧倒的な高さで聳えていま
アズマシャクナゲ
 
す。ここまで来てさらにあれを登るのかとたじろいでしまうほどの大きさです。
この先のルートを確認しましたが、地形図のままにしばらくは緩い登りが続き最後につじつま合わせのようなとんでもない登りになることがわかります。樹木も見られないのっぺらぼうの斜面、はたして登れるのか。

アカヤシオとシャクナゲの競演:
1310m峰からミヤコザサが現れます。始めは数センチほどの芝草程度ですが積雪量に従って丈が決まるといわれている通り徐々に大きくなり、この先最後の急登で泣かされることになろうとはこのあたりでは思いもよりませんでした。
しばらくは同じような景観が続きますが、1310m峰から一旦下って登り返したあたりからアカヤシオが目立つようになります。シロヤシオも多いのですがまだ時期が早く蕾がやっと膨らんできた程度でした。
標高が1400mほどになったあたりからシャクナゲの群落がいくつか見られます。ちょうど開花したばかりの艶やかな花色で惜しげもなく咲いています。大きな群落は2箇所ほどありどちらも周囲のアカヤシオと競うかのようです。
左に小中本沢左岸の尾根、右に前袈裟前衛峰の尾根が並走していますがこちらがダラダラとなかなか高度が上がらないのに比べ左右の尾根はぐんぐんと見上げるような高さになりました。それらの山肌にアカヤシオをまとってじつに艶やかです。

いよいよ急峻な最後の登り:
小中本沢左岸尾根、郡界尾根の先に赤城山
 

目の前に壁のように立ちはだかる笹の斜面が現れました。標高で1550mのあたりになります。見上げれば前袈裟直下の大ナギがわずかに顔をのぞかせています。
これまで消え消えながらずっと続いていた道跡もここで消えました。あとは鹿道が頼りですが、これが右に左に交錯して定まりません。さらに尾根もなくなってのっぺらぼうの笹の急斜面になってしまいました。もうこうなるととにかく上を目指して遮二無二這い上がるしかありません。
途中、鹿道に引きずられるように右に寄ったところで弓の手沢の源頭部に出ました。地形図で凹みが認められるところです。さらさらと流れるきれいなナメで、靴底に食いつく岩質なのでこいつはいいやとしばらくその沢を登りましたが気がつくとプラナリアみたいな生物が水流の下にたくさん張り付いていて気持ち悪いのでまた笹の斜面に戻りました。
笹の丈もかなりあって、ここの斜面の登りで完全にグロッギー気味となりました。でも、振り返ればここまでたどってきた長大な尾根を目の下に、アカヤシオに被われた前袈裟前衛峰の尾根を東に、小中本沢左岸の尾根を西に見て袈裟丸南面の広大さを実感できる感動的な景観です。
悪戦苦闘の末、やがてうまい具合に踏み跡に出ました。その時はまだ気付かずにいましたが、じつはこれが小中本沢左岸の尾根でした。登っているうち覚えのあるコメツガの林になっていつの間にか頂上直下に達していました。結局、尾根を登り切って小中本沢左岸の尾根に達したという達成感のような気分に浸れずじまいで、いつかはと永年暖めてきたこの長大な尾根歩きがいつの間にか終わっちゃったわけです。(^_^;

混雑を極める前袈裟丸山頂上:
ひょいと頂上に飛び出すとそこはたくさんのハイカーがひしめいていました。大人数のグループも多く喧噪のお花見さながらです。さらに次々とハイカーが登って来来ます。
一等三角点や頂上山名板の写真を撮るためにそばに陣取っているハイカーにお願いして移動していただかなけ
頂上より上州武尊山
 
ればならないほどでした。
念願の尾根を歩き通した余韻を楽しみたいところですがとても長居できる雰囲気ではなく、おにぎりを頬ばりながら息を整えて、そそくさと退散です。

南東尾根へ:
頂上は展望もほとんどありませんが、小丸山方面へ少し下ると南面の好展望が広がっています。たどってきた尾根が足下に延々と続いています。
自転車をデポしたしゃくなげ橋へ下るため南東尾根を下山路としました。
分岐はちょっと解りにくいですが気をつけると踏み跡がありテープのマーカーもありますのでここから右に下ります。
最近このコースを歩くハイカーも増えたらしく踏み跡もかなりはっきりしてきています。テープを必要以上に付けてしまった人がいて、もう静寂の尾根ではなくなってしまったようです。コンパスと地形図を頼りに静寂を楽しむべきルートであってほしかったのですがちょっと残念です。(案の定、ルートを違えたハイカーがうろうろしていました。テープを見て入り込んだようです。)
前袈裟前衛峰はアカヤシオの群生地ですがまだ開花にはわずかに早すぎたようです。
前衛峰からは小丸山方面から賽の河原を経て折り場口までの一般コースの尾根が見通せます。また小法師尾根、庚申山、鋸山、皇海山など足尾の核心部や日光白根山、男体山なども一望で、ここは隠れた展望台です。
前衛峰を越えて下りになるとアカヤシオもちょうどよい具合に咲いていました。ただ、このあたりはアカヤシオの数は少なくて、群生地はさらに尾根通しのかなり先になります。
途中コメツガ林の先で左にコースを変えて尾根筋を離れ一気に下降します。ここのコース入口は踏み跡が交錯してちょっと判りにくいですが万一踏み跡を失っても平坦斜面とはいえわずかに沢状の地形と尾根上の地形を見定めて尾根上のルートを選べば行き詰まることはありません。
急斜面なだけあってあっという間に高原状のダケカンバ疎林に下り着き、そこまで林道が入ってきています。
あとは新緑を楽しみながらのんびりしゃくなげ橋まで戻るだけです。

   前袈裟前衛峰より庚申山、鋸山、皇海山、日光白根山 

      歩いた尾根の全貌 

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