【メモ】 |
折場橋から入山:
弓の手コースの登山口(折場口)はバスまで入り込んで大混雑ですが、ここで仲間と別れてひとり林道をそのままだらだら下って折場橋の架かるヒライデ沢を入山点としました。【1】
すぐ前が連続する砂防堰堤となっていますが右の踏み跡に従って堰堤を越えます。堰堤を越えるとすぐ2段の滝が現れます。美しい滝です。釣師が滝の左を直登しているようで、トラロープが垂れていますが、たまたま初めての軽登山靴でもあり岩が滑りやすく危ないので右に大きく高巻く踏み跡をたどりました。【2】
右手から登ってきたはっきりした道に出てこれをしばらくたどりますが、このまま登ると尾根道となり沢から大きく離れてしまいます。鹿道が急斜面をトラバースして沢に降りますのでこちらをとることにしました。この間500mほどのヒライデ沢ですが、のぞき込むといくつも滝やナメを連ねて魅力的です。両岸は岩壁にアカヤシオが咲いてうっとりするような景観です。【3,4】
滝の上流はそれまでとはうって変わって笹原の中の優しい流れとなり、そのまま「奥の庭園」(
袈裟丸山笹尾根参照)に なります。
飛び石で渡って滝の右岸にあたる断崖に登り返すと、そこにアズマシャクナゲが満開となってアカヤシオとの競演を見せてくれます。ここ数年来で一番の花つきです。【5,6】
断崖上に立つと眼下にヒライデ沢を、前方に「奥の庭園」を見下ろす壮観な眺めが得られます。【7】
のっけからいきなり興奮させられるような展開に一人で来たことが悔やまれました。
いくつも支尾根を超えて大きくトラバース:
断崖から戻ってそのまま登ると笹の支尾根となります。できるだけ前袈裟本体に近い尾根を目指そうと西へ西へとトラバース気味に登りましたが、笹の尾根と疎林とが織りなす広闊な景観は袈裟丸南面ならではのもので、こんな夢のような場所に周囲何キロか誰もいないで独り占めとはなんとももったいなくまた贅沢なワンデリングです。笹原のあちこちには大きな露岩が頭をもたげ、幻想的な風景です。キツネがこちらに気づかないのか笹原の中をゆっくり歩いていました。周囲を取り囲んでアカヤシオが惜しげもなく咲き競い夢のようです。
緩やかな尾根に隔たれたゆったりした沢がいくつかあり、それらはみな庭園のようです。以前弓の手コースから笹尾根に回り込んで、この景色を「奥の庭園」と勝手に呼びましたが、さらに素晴らしい景観が次々現れてしまったのでなんと名付けようか、まず「奥の庭園」の次に「奥の奥の庭園」、さらの「そのまた奥の庭園」と続けるしかありません。(^_^;
【8,9】
中間点標識
|
最後に笹尾根に這い上がるとこれが(結果的に)前袈裟丸山から南下する大きな尾根(1311.8m三角点に達する)となります。この尾根も露岩とミヤコザサとの庭園で、その縁はアカヤシオの花が屏風のごとく見通しを遮っています。アカヤシオの花以外なにも見えないと言ってオーバーではありません。【10,11,12】
この尾根からは前袈裟が圧倒的な迫力で見上げられます。ここまで来ると、弓の手コースから見る遙か遠い前袈裟とは違い、でっかい山体を間近に見上げることになります。【13,14】
ここからアカヤシオの花の中をひたすら登ることになりますが、地形図からもわかるとおり、急峻な登りというより徐々に徐々に高度を上げていく尾根で、花を楽しんでいるうちに気づいたら右手後方に小丸山が見下ろせた、という登りです。ここでやっと位置関係がはっきりしてきます。じつはここまでいくつも小尾根をトラバースしたために自分の位置が今ひとつはっきりしませんでした。いずれにしても前袈裟に突き上げることだけはわかっていても弓の手沢筋まで行きすぎると頂上直下でナギに行き詰まることが予想され、最奥まで進んでもこの尾根止まりと決めていたのですが、結果的には正解だったことになります。
なお、途中に中間点標識がありますので一つの目安になりますが、この中間点の位置が地形図上でどこなのかは不明です。1701m標高点あたりなのでしょうか。(そもそもこの「中間点」なる標識がなんなのか、サイトを巡ってもよくわかりませんでした。)
永く思い描いていた南面の大展望:
前衛ピークから皇海山、鋸山、庚申山、小法師尾根
|
この尾根は前袈裟から南に走る長大な尾根で、小丸山方面から前袈裟を仰いだとき左手にアカヤシオがびっしり咲いている前衛峰が認められますが、ここを起点に延々と大滝まで延びています。
前衛峰のピークまではとぎれることなくアカヤシオが続きます。またシロヤシオも多く、特徴ある樹皮の巨木が蕾をびっしりと準備していました。今年の開花期にはこの尾根を白い花びらで埋めるはずです。
徐々にコメツガが多くなり深山の雰囲気が濃くなるとひょっこり前衛峰の頂上に飛び出します。これまで薄い笹でしたが、頂上付近を境に腰ほどの笹丈となり藪も少々うるさくなってきました。
一旦鞍部の笹原に降り立ちますが、この鞍部がなかなか雰囲気の良いところで、後方にこれまでたどった尾根、左手に弓の手沢の広大な自然林のエリア、前方にのしかかるような高さで前袈裟を望む絶好の展望が広がっています。【15,16,17】
鞍部から尾根をたどる鹿道は幾筋も左へ左へとトラバースして分かれて行きますが、忠実に尾根をたどる踏み跡もあり(結果的には下山の時にわかったのですが)これが山頂手前で小丸山からの縦走路につながるようです。私は頂上直下南面のナギの上に立つことにこだわってこの鹿道を選んで急峻な斜面をトラバースしましたが、これが難儀な笹藪で笹丈の低い場所ではとっかかりがないため急角度に靴底がフィットせず、笹丈の大きい場所では笹を漕ぐのに大苦労、ほんのわずかな距離にすっかり時間をロスしてしまいました。
しかしナギを眼の下にして袈裟丸南面全体を俯瞰したときの雄大さ、苦労の甲斐はありました。やや右方向に郡界尾根の八重樺原が、その先に根利牧場、さらに大きく赤城山が展望できます。吹き上げてくる風の気持ちいいこと。【18】
うって変わって大にぎわいの前袈裟頂上:
最後は笹の深くなった斜面を委細構わず体力任せで突破するしかありません。遠目にはさっぱりした笹原ですが腰を没するほどの密生でおまけに急な斜面ですからなかなか上へ進めません。【19】
山頂の声が聞こえ伸び上がるとわずかに派手なウェアの人影さえ見えるというのにここでついに足が痙攣してひっくり返ってしまいました。入念にマッサージ(これが痛いんだ。(^_^;
)すること15分、やっとの思いで歩き始めてどうにか頂上に立つことができました。これまで人に会わなかったどころか人の気配さえなかったのに、ここは大賑わい、大騒ぎ、とても登頂の感激をかみしめるような雰囲気ではありません。
痙攣は相変わらず不安な状態で下山に備えてまた入念にマッサージしましたが、それを見て湿布薬をくださった方がいて、思いの外これが効いて一安心。感謝、感謝。(筋肉痛などには薬効があるのかないのかちょっと頼りない湿布薬ですが、痙攣には速効で効くようです。山の常備品にすることにしました。)
下山もアカヤシオに囲まれて:
ツツジ平より長大な東南尾根を見返る
|
あとはいつもの道を折場口まで戻るだけ。ときどき立ち止まってはマッサージしながらのんびり歩きましたが、苦労して登った尾根をずっと右に見ながらの下山ですからなんだか気分も高揚してルンルン。(^_^)
小丸山は巻き道をとりましたが、ここのアカヤシオは樹齢は若いもののかなりの密度で咲いていました。さらにミニ賽の河原から見るロボット雨量計付近の斜面はまさにアカヤシオの海。ピンクに染まっていました。【20】
途中、前線が通過したらしく霰が降ったかと思うとさっと晴れ上がったりの慌ただしい天気で雨具を出したり入れたり大忙しのハプニングもありましたが、無事仲間の待つ登山口にたどり着きました。
結果的には、この尾根から前袈裟を目指すなら「奥の奥の庭園」から尾根通しに登ればこれが枝尾根でやがて合流し、さらに直下のトラバースをせずに素直に尾根をたどれば比較的楽に登れたはずで苦労は半分で済んだかもしれません。しかし「そのまた奥の庭園」のアカヤシオの海を見ることができたし、弓の手沢ナギのてっぺんに立つことができたことで、苦労は帳消しになりました。
|